- 過去にキャッシングを利用して長期延滞してしまった…
- 以前に任意整理や自己破産などの債務整理をした経験がある
- 今、カードローンやクレジットで高額な借金を抱えている
もしも借金をしていたり信用情報に事故情報が登録され、いわゆる「ブラック状態」になってしまったりしたら就職に不利になってしまうのでしょうか?
今回は借金や信用情報が就職活動や企業の採用へ与える影響について解説しますので、就職・転職活動中の方はぜひ参考にしてみてください。
1.キャッシングの滞納、債務整理情報は「信用情報」に登録されている!
過去にカードローンやキャッシングを利用して延滞し続けたり、任意整理や自己破産などの債務整理をしたりすると、「信用情報」に事故情報が登録されている可能性があります。
信用情報とは、個人のローンやクレジット利用履歴です。現在契約しているカードローンやクレジットカードなどの借入状況、借入金額、返済履歴や延滞履歴、債務整理履歴などが載っています。
信用情報を見るとその人がどのくらい借金しているのか、また過去に長期延滞や債務整理したことがあるかなど、詳細に把握できます。
「もしも就職先に信用情報をみられて借金滞納や債務整理を知られたら、採用してもらえないのでは?」と心配になってしまいますよね?
では応募先の企業に信用情報を確認される可能性があるのか、以下でみていきましょう。
2.一般企業は信用情報を確認できない
結論からいうと、一般企業は個人の信用情報を確認できません。
採用前の応募者はもちろん、自社の従業員であっても個人情報を閲覧する権限はありません。
信用情報を確認できるのは、本人と金融機関と貸金業者だけです。つまり本人を除くと銀行や信用金庫、消費者金融や信販会社、カード会社などだけが信用情報を閲覧できます。
信用情報は重要な個人情報であり、基本的に本人以外は閲覧できないことになっているためです。たとえ夫や妻、親子であっても勝手に閲覧できません。
不動産会社、保険会社、メーカー、建築などの一般企業に就職するとき、信用情報をみられる可能性はないと考えましょう。
3.応募先が銀行やカード会社なら信用情報を確認できる?
銀行などの金融機関や消費者金融・カード会社などの貸金業者であれば、一定の場合に信用情報を確認する権限が認められます。ではこういった会社に就職する場合には、採用の際に信用情報をみられてしまうのでしょうか?
3-1.信用情報の照会目的は限定されている
実はこれについても基本的には心配要りません。信用情報については「利用方法」も限定されているからです。信用情報を照会する目的として認められるのは、基本的に「貸付審査のため」に限定されます。
銀行などがローン審査を行うときには、申込人に返済能力があるのか、信用できる人物かを判断しなければなりません。その際、過去に延滞履歴や債務整理履歴があるかどうかが重要なファクターとなります。そこで信用情報を確認して、貸付をしてもよいかどうか判断するのです。
また今は貸金業法により「年収の3分の1を超える貸付をしてはならない」という借金の総量規制が適用されます。カード会社や消費者金融は、カードやキャッシングの申込みがあったときに「現在どのくらいの借り入れをしているか」をチェックしなければなりません。そのために信用情報を閲覧して、現在の借入額を確認する必要があります。
こういった審査のためにしか、信用情報の照会は認められていません。
3-2.信用情報照会の目的として認められる4つのケース
金融機関や貸金業者が信用情報を照会できる目的は以下の4パターンです。
- 新規にクレジットやローンの申込みを受けたときの審査のため
- クレジットやローンの契約後に信用状況の審査をするため
- 本人から問い合わせがあって、信用情報の状況を確認するため
- 信用情報機関から調査依頼があったときや登録情報を更新したときに信用情報の状態を確認するため
「採用の判断」は上記に含まれないので、「目的外利用」となってしまいます。
目的外利用が発覚すると個人のプライバシー権を侵害する違法行為になりかねません。
3-3.信用情報を勝手に取得される可能性は?
金融機関や貸金業者が目的外利用で採用の際に信用情報を取得する可能性はないのでしょうか?
これについては「ほとんどない」と考えられます。1つには、採用の際に金融機関やカード会社などが勝手に信用情報を取得すると本人に知られる可能性があるからです。
本人が信用情報機関に開示請求をすれば、情報を開示してもらえます。開示を受ければ、過去6ヶ月以内に誰が信用情報にアクセスしたのかが判明します。このとき、応募先の金融機関などが勝手に情報を閲覧していたら、不正利用されたとわかるでしょう。
また信用情報機関自身も、不審なアクセスがあると独自に調査を行う可能性があります。
そうなったら、本人からプライバシー権侵害を主張されて慰謝料請求されるリスクが発生しますし、信用情報機関の会員資格を停止され、その後は信用情報を閲覧できなくなってしまいます。そうなったら新規顧客の審査ができないので業務に著しい支障が生じるでしょう。またニュース報道されて大きく信用が失われ、利用者が激減するリスクも高まります。
このように、金融機関や貸金業者が採用の際に目的外利用で信用情報を確認すると極めて重大なトラブルになるので、採用の際に勝手に信用情報を参照される可能性はまずありません。
4.本人に信用情報を提出させる可能性は?
企業自身が採用の際に応募者の信用情報を確認できないとしても、本人に信用情報を提出させることは可能です。本人が信用情報機関へ申請すれば、詳しい信用情報に関する書類を送ってもらえるからです。
実際、過去にALSOKという会社が従業員に対し、自分の信用情報書類を取り寄せて提出するよう求めた事件がありました。このときには「目的外利用」にあたる可能性が高いと強く批判され、ALSOKは信用情報の収集を中断しました。
このように一般企業が従業員本人に信用情報を提出させようとしても、認められるものではありません。もしもそのようなことを求められたらはっきりと拒否しましょう。
5.自社ブラック情報を参照される可能性
カード会社や銀行によっては、信用情報以外に自社内に「独自のブラック情報」を蓄積しているものがあります。
独自のブラック情報とは、過去にカードローンやクレジットカードなどの長期延滞をした人、債務整理によって貸倒損失となった利用者などの情報をまとめたリストです。
信用情報とは異なり公開されませんし、社内で独自に管理されるのでどのように利用されたのか確認する手段もほとんどありません。
採用の際、カード会社が自社ブラック情報を確認して「過去に自社に迷惑をかけた人物ではないか」チェックする可能性はあります。そういった企業に就職するのは難しくなるケースは十分に考えられます。
もちろん、採用の際に自社ブラック情報を参照しない企業も多いでしょうから、過去に債務整理や長期延滞、強制解約された企業に絶対就職できないわけではありません。
ただし「リスクはある」といえるので、おぼえておきましょう。
6.就職の際、借金の申告義務はある?
就職する際、借金を申告する義務はあるのでしょうか?
一般的な履歴書の書式を見ればわかりますが、「借金の状況」を記載すべき項目はありません。「賞罰」という欄がありますが、ここには受賞履歴や犯罪履歴などを書くものであり借金とは無関係です。
実際、借金があるかどうかは個人的な事情なので、採用の際に企業が知る必要はありません。
履歴書に借金について書く必要はありませんし、面接の際にも申告する必要はありません。
企業側が面接で借金の状況について聞いてくるケースもほとんどないでしょう。万一聞かれた場合にも答えるかどうかは自由です。ただし入社後のトラブルを避けるため、嘘はつかない方が無難でしょう。
7.自己破産した場合の職業制限について
自己破産をすると、一時的に「資格制限」されるので一定の職業につけなくなります。たとえば警備員や保険外交員などの仕事はできません。
自己破産の手続き中はこういった会社への就職が難しくなる可能性があります(ただし一般的な事務職員などとしての勤務であれば可能です)。
資格制限が問題となる会社では、採用の際に過去の破産履歴について尋ねられる可能性もありますから、正直に答えましょう。
ただし自己破産における資格制限の期間は「破産手続開始決定後免責決定が確定するまで」の間です。過去に自己破産をしていても、すでに免責されていたら影響はないので資格制限を心配する必要はありません。
8.金融機関やカード会社への就職後、自社カードを作ると信用情報を調べられる!
もしも銀行などの金融機関やカード会社、消費者金融会社などの貸金業者に採用されたら、就職後に信用情報を照会されて債務整理情報など知られる危険性はないのでしょうか?
先にも述べたとおり、自社従業員であっても勝手に信用情報を照会できません。しかし「自社のカードを発行させる」ことにより、間接的に信用情報を調べることは可能です。
実際、銀行やクレジットカード会社では、入社後に自社のカードを発行するよう求められるケースが少なくありません。
カードの申込みをすると、金融機関やカード会社は正当な権限にもとづいて信用情報を照会できます。入会審査なので目的外利用になりません。過去に延滞履歴や債務整理履歴があってブラック状態になっていたら、知られてしまう可能性があります。
9.ブラック状態だと解雇される?
入社後のカード発行審査で過去の長期延滞や債務整理が発覚したら、どのようなリスクが発生するのでしょうか?
9-1.借金があるだけなら不利益はない
基本的に、借金しているだけであれば不利益に働く可能性はほとんどありません。たとえばカードローンやクレジットカードなどの残債があっても、きちんと返済を継続できているなら特段の問題はありません。
実際、金融機関に入社したら自社のカードを発行して使っている方が多数います。
9-2.ブラック状態になっている場合
自社カードの審査の際に延滞情報や債務整理情報をみられて「ブラック状態」であることが発覚したら、解雇などの不利益を受ける可能性があるのでしょうか?
まず「解雇」の可能性についてはほとんどないと考えましょう。
法律上、解雇できる事由は極めて限定されているためです。
- 解雇の客観的合理的理由
- 解雇の社会的相当性
上記の2つを満たさねばなりません。過去に借金返済を長期延滞したり個人的に債務整理したりしても、会社の業務に支障が及ぶわけではないので、解雇は認められません。
9-3.解雇以外の不利益取り扱いは?
ブラック状態が発覚した場合、減給や賞与のカット、異動や降格など解雇以外の不利益を受ける可能性はあるのでしょうか?
これらについても基本的にはないと考えましょう。会社の業務と無関係な個人の借金問題により、減給や降格などをするのは違法となる可能性が高いためです。
ただし会社によっては人事評価で低評価をつけられたり事実上昇進させてもらえなかったりするリスクが発生する可能性はあります。人事評価の基準が明確でなく、上司が恣意的に評価する制度となっている企業も多いためです。そういった会社では「債務整理したから」という理由ではなく、別の理由をつけられて悪い評価にされたり、理由なく昇進を見送られたり重要なポストに抜擢してもらえなかったりするケースは考えられます。
特に信用を重視する金融機関であれば、何らかの事実上の不利益を受ける可能性が高くなるでしょう。
一般企業の場合には、従業員の借金に無関心なケースも多いでしょうからほぼ影響しないケースも多いと考えられます。
ブラック状態が発覚したときの企業の反応は各社によって大きく異なるので、一律に影響があるともないともいえません。ただし解雇や減給などの明らかな不利益取り扱いを受けた場合には違法となる可能性が高いので、弁護士に相談してみてください。
10.給料を差し押さえられると借金が会社にバレる
過去に借金返済を延滞したり債務整理をしたりしても、採用先の会社に知られる可能性はほとんどありません。
しかし現在借金をしていて長期滞納してしまうと、会社に発覚するリスクが大きく高まるので注意しましょう。借金を延滞すると、債権者が「給料差し押さえ」を行うからです。
給料を指し押せられたら裁判所から会社へ債権差押命令が届きます。そこには債権者名も書かれているので、会社は銀行や消費者金融の名称を目にします。すると当然「借金を滞納したのだろう」と勘づかれるでしょう。
これによって解雇されるわけではありませんが、人事や経理などの給与を担当する部門の従業員や会社の上層部などに借金延滞を知られてしまいます。
もしも会社に借金を知られたくないなら、給料の差し押さえを受ける前に債務整理をしましょう。債務整理によって借金問題を解決しておけば、裁判を起こされたり給料を差し押さえられたりする可能性はなくなります。
11.信用情報の訂正、債務整理は弁護士へご相談を
信用情報に事故情報が載ってしまっても、間違って登録されたのなら訂正できる可能性があります。現在借金をしていて返済が苦しいなら、早期に債務整理することによって裁判や給料差し押さえなどのリスクを避けられます。
当事務所では信用情報の訂正と債務整理に積極的に取り組んでいますので、会社に借金問題を知られたくない方はお早目にご相談ください。