
信用情報機関は、個人の「信用情報」を管理する専門機関です。
実は信用情報は私たちの日常生活に非常に大きく影響します。
たとえば信用情報に事故情報が登録されていると、一切のローンやクレジットカードの審査に通りません。
また消費者金融やクレジットカードのキャッシング残高などがあると、信用情報を参照されて確認されるために「住宅ローン審査」に通りにくくなります。
その重要な信用情報を管理しているのが信用情報機関なので、どういった組織なのかしっかり理解しておく必要があるといえます。
実は信用情報機関には以下の3種類があります。
- JICC
- CIC
- KSC(全国銀行個人心情方法センター)
以下でそれぞれの信用情報機関の違いや自分の信用情報を確認する方法を解説しますので、個人情報に関心をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。
1.信用情報機関で登録される情報
信用情報機関は、個人の信用情報を管理している専門組織であり、以下のような情報が登録されています。
- カードやローンの申込み情報
- 借入先
- 残高
- 返済状況
- 延滞状況
- 代位弁済情報
- 債務整理に関する情報
信用情報機関は貸金業法にもとづいて政府から認定を受けている組織で、日本では以下の3種類があります。
- JICC(日本信用情報機構)
消費者金融会社が中心となって組織している信用情報機関です。
- CIC(株式会社シーアイシー)
カード会社や信販会社が中心となって組織している信用情報機関です。
- KSC(全国銀行個人信用情報センター)
銀行や信用金庫などの金融機関の組織である全国銀行協会が運営主体となっている信用情報機関です。
それぞれが加盟している貸金業者や金融機関から情報を取得して、個人の信用情報を管理しています。
2.3つの信用情報機関の違い
JICCとCICとKSCにはどのような違いがあるのでしょうか?
主な違いは以下の3点です。
- 加盟している事業者
- 登録される情報の保管期間
- 信用情報開示請求の方法
以下でそれぞれについて、みていきましょう。
3.加盟している事業者の違い
JICC、CIC、KSCの1つ目の違いは、加盟している事業者です。
- JICCに加盟している事業者
JICCに加盟しているのは、主に消費者金融会社です。プロミスやアコム、アイフルなどの大手業者はもちろんのこと、町の小さな消費者金融会社もJICCに加盟しているケースが多数となっています。
ただしクレジットカード会社や信販会社、保証会社やリース会社などもJICCに加盟している例があります。また銀行の中にもJICCに加盟しているものが存在します。
- CICに加盟している事業者
CICに加盟しているのは、主にクレジットカード会社や信販会社です。オリコ、セゾン、JCB、セディナなどの会社はCICに加盟していると考えましょう。
リース会社や保証会社、消費者金融会社や銀行の中にもCICに加盟しているものがあります。
- KSCに加盟している事業者
KSCに加盟しているのは銀行や信用金庫などの金融機関です。奨学金の運営主体である日本学生支援機構や公庫、農協などもKSCに加盟しています。
消費者金融やクレジットカード会社にはJICCとCICの両方に加盟している業者も多く、銀行の中には、上記3つのすべてに加盟しているところもあります。
加盟先の調べ方
貸金業者や金融機関各社がどこの信用情報機関に加盟しているのかは、どのようにして調べればよいのでしょうか?
こちらについては、利用を申し込む際に交付される「申込み前の同意事項」などの書類を確認してみてください。
その中に「個人情報の取扱い」などの項目を探し、「信用情報の利用・登録」と書かれている欄をみてみましょう。通常はそこに加盟先の信用情報機関が記載されています。
4.信用情報が登録される期間の違い
2つ目の違いは、信用情報が登録される登録期間です。
4-1.自己破産、個人再生した場合
まずは自己破産や個人再生した場合の事故情報登録期間が異なります。
CICやJICCの場合、自己破産や個人再生をすると「事故情報」が登録され、手続き後5年間残ります。
一方でKSCの場合「官報公告」情報が登録され、10年間程度は保管され続けます。
このようにKSCの場合、CICやJICCよりも自己破産や個人再生によるブラックリスト期間が長くなる可能性が高いといえます。
4-2.借金を延滞した場合
借金を延滞した場合の事故情報登録期間についても、各信用情報機関で異なる可能性があります。
CICとKSCでは「延滞状態の解消後5年間」で事故情報が抹消されます。
一方でJICCの場合、契約時期によって事故情報の登録期間が変わります。
従来、借金を延滞した場合JICCでは「延滞解消後1年」で事故情報が抹消される扱いとなっていました。ところが2019年10月1日からはJICCでの運用が改定され、「延滞解消後5年間」事故情報が登録される扱いに変更されました。このように運用が変わったのは、他の信用情報機関では延滞状態解消後5年間事故情報が登録されるのに対し、JICCだけが1年で抹消される扱いとなっていたところ、JICCが他の機関に運用方法を合わせたためです。
この運用改定により、JICCでは2019年9月30日までに貸金業者を利用した場合には延滞解消後1年で事故情報を消してもらえますが、2019年10月1日以降にローンやクレジットカードを利用した場合には延滞状態を解消しても5年間、事故情報を消してもらえません。
JICCでは借り入れ時期によって事故情報の登録期間が異なる可能性があるので、注意しましょう。
4-3.時効援用した場合の登録期間
時効を援用した場合の情報登録期間も信用情報機関によって異なる可能性があります。
JICCの場合には、時効援用をすると情報がファイルごと消去され「該当なし」となります。
つまり事故情報は完全に消去されるので、ローンやクレジットカードを通常通り利用できる状態になります。
一方CICの場合には、時効援用をしてもファイルは消去されず「完了」や「契約終了」などの情報が5年程度登録されます。
そこでCICの情報を参照されると、時効援用後も5年程度はローンやクレジットカードを利用できない可能性があります。
4-4.任意整理の登録方法
任意整理した場合の事故情報の登録方法にも、信用情報機関によって多少の違いがあります。
JICCの場合には直接「任意整理の情報」が登録されますが、CICやKSCでは直接の登録は行われていません。「重要事項」という項目に事故情報としての記録が残ります。これにより、金融事故が発生した事実を把握できる仕様になっています。
ただこのような登録方法の違いは、本人のローンクレジットの利用に対して影響しません。どちらにしても「任意整理後5年間程度はブラックリスト状態になる」と考えてください。
5.信用情報開示請求の方法
3つの信用情報機関では、信用情報の開示請求の方法についても違いがあります。
信用情報は本人であれば開示申請できるので、自分の信用情報の状態を確認できます。
その際、3つの信用情報機関において受付方法や開示方法、手数料に違いがあるので、知っておきましょう。
5-1.JICCの場合
JICCでは、以下の3種類の方法で信用情報開示請求ができます。
- 窓口へ行って申請する
東京または大阪にあるJICCの事業所へ行き、その場で開示申請する方法です。
ただしコロナウイルス感染症の影響により、2021年2月時点では窓口での受付が制限されています。
- 郵送で申請する
郵送でも申請が可能です。申請書と必要書類を送ると10日程度で自宅宛に開示書類を郵送してもらえます。
- 専用アプリを使って申請する
信用情報開示請求用の専門アプリを使って情報開示申請する方法もあります。アプリで申請した場合にも、10日程度で自宅宛に開示書類を郵送してもらえます。
なおこの方法を利用してもスマホ画面では情報確認できません。
5-2.CICの場合
CICで信用情報を開示請求する方法は以下の3パターンです。
- 窓口へ行って申請する
全国に点在するCICの事業所の窓口へ行って申請する方法です。ただしコロナウイルス感染症対策のため、2021年2月時点では受付が制限されている可能性があります。
- 郵送で申請する
CICでも郵送で情報開示申請を受け付けています。必要書類を送付すると10日程度で開示書類を送付してもらえます。
- Web上で閲覧する
CICではweb上での信用情報閲覧が可能です。必要事項を入力するとその場で信用情報を確認できるので便利です。ただしweb上で情報開示を申請するためにはクレジットカードの情報入力が必要なので、ブラックリスト状態の方が利用するのは難しくなる可能性があるでしょう。
5-3.KSCの場合
- 郵送で申請する
KSCでは、郵送でしか信用情報開示申請を受け付けていません。申請書を作成し、身分証明書などの必要書類と共に郵送しましょう。
10日程度で開示書類を送付してもらえます。
5-4.手数料の違い
信用情報開示請求を行う際には手数料が発生します。
JICCやCICで窓口申請をするときには、1件500円です。
それ以外のケースでは1件1,000円がかかります。
確かに料金だけをみると窓口申請が安いように思えますが、直接出向くと交通費もかかるでしょうし、時間もとられます。そういった手間や実費を考えると、オンライン申請やアプリによる申請が一番お得といえるかもしれません。
状況に応じて一番便利な方法を利用しましょう。
6.信用情報は3社で共有されている
以上のように、JICCとCIC、KSCはそれぞれ異なる機関であり、独自に個人情報を管理しています。
それであれば「1社で事故情報が登録されていても、別の信用情報機関で登録されていなければ、その信用情報機関に加盟している貸金業者から貸付を受けられるのでは?」と考える方がいるでしょう。
しかしこれは基本的に不可能です。信用情報の一部は3社間で共有されているためです。
6-1.3社で情報共有されるCRIN
実はJICCとCIC、KSCはCRIN(クリン)というシステムによってそれぞれが管理する信用情報を共有しています。
CRINによって共有されるのは以下のような情報です。
- 氏名や電話番号などの個人情報
- 契約日や利用金額
- 支払いや延滞などの状況
- 異動情報(事故情報)
- 契約の終了状況
- 申告した内容:身分証の紛失等
上記のように、ローンやクレジットの利用状況や延滞情報、事故情報は3社で共有されます。1つの信用情報機関で事故情報を登録されたら、他の機関にも伝わると考えましょう。
1度支払の延滞や債務整理によって事故情報が登録されると、別の信用情報機関へ加盟している業者からも貸付を受けるのは困難となります。
6-2.CICとJICCが共有するFINE
CICとJICCは、CRINによっても共有されていない情報をFINEというシステムによって共有しています。
FINEでは以下のような情報が共有されます。
- 貸付残高
- 短期の延滞
- 申し込み情報
貸付残高が共有されるのは、借金の総量規制に対応するためです。現在、消費者金融やクレジットカード会社からは「年収の3分の1以下」しか借りられないという「借金の総量規制」がかかります。
別の信用情報機関に加盟している貸金業者からの借入情報も把握することで、過剰な貸付を防止する仕組みが採用されています。
またFINEでは「申込み情報」も共有されるので注意しなければなりません。1度にたくさんの消費者金融やカード会社に申請すると、情報が伝わって警戒されてしまう可能性が高まります。
1度カードやキャッシングを申し込んだら、半年程度は期間をあけてから次のカードやキャッシングサービスを申し込みましょう。
7.信用情報開示請求する際の注意点
7-1.3つすべての信用情報機関へ開示請求する
自分の信用情報の状況を知るためには、各信用情報機関へ開示請求をしなければなりません。
このとき、できれば3社すべてに対して開示請求をするようお勧めします。1社では事故情報が登録されていなくても、他で登録されている可能性があるからです。
ただし銀行系以外のクレジットカードや消費者金融なら、KSCでの情報確認が不要なケースもあります。消費者金融会社やカード会社はKSCには加盟していないので、JICCとCICから事故情報が消えていたら貸付やカード発行を受けられる可能性があります。
7-2.銀行カードローンの場合の注意点
銀行カードローンを申し込みたい場合には、必ず事前に3つすべての信用情報機関へ開示請求しましょう。
そもそも銀行自身が3つの信用情報機関に加盟しているケースもありますし、そうでない場合でも「保証会社」が障壁となるためです。
まず銀行は、必ずKSCに加盟しています。
そして銀行カードローンを利用すると、消費者金融会社や信販会社が「保証会社」として入るケースがほとんどです。保証会社は債務者がカードローンの返済をしないときに代わりに銀行へ残債務を支払う役割を果たします。このことにより、銀行は損失を防げる仕組みです。そして保証会社である消費者金融会社や信販会社はJICCやCICに加盟しています。
つまり銀行カードローンの申請をすると、銀行がKSCへ、保証会社がJICCやCICへ情報照会して、結局はすべての信用情報を確認されてしまうことになるのです。
以上のような事情があるため、銀行カードローンを利用するときには、たとえ対象の銀行がKSCにしか加盟していなくてもすべての信用情報機関から開示を受けておくべきといえます。
8.信用情報の確認、削除は弁護士へご相談を
信用情報を確認したとき、事故情報が登録されていたらローンやカードを利用できません。ただ状況によっては、事故情報を消去できる可能性があります。
まずは信用情報を回復できる可能性があるかどうか、弁護士へ相談してみましょう。事故情報を消去できそうであれば、当事務所で信用情報回復の措置を代行いたします。
ローンやクレジットカードを利用できないままでは非常に不便ですし、住宅ローンや車のローン審査にも通らず家族にも迷惑をかけてしまう可能性が懸念されるでしょう。
気になる方は、当法律事務所までお問い合わせください