借金やスマホ代などを2~3ヶ月以上にわたって長期延滞すると、信用情報に事故情報が登録されてしまいローンやクレジットカードを利用できなくなります。いわゆる「金融ブラック」とよばれる状態です。
過去に任意整理や自己破産などの債務整理をした場合にも同様に事故情報が登録されて金融ブラック状態になります。
全国に金融ブラック状態の人はどのくらいいるのでしょうか?
今回はCICの公表データを参考に「金融ブラックの方の割合」を調べてご紹介します。
金融ブラック状態になっても事故情報を消せる場合や対処方法についても解説します。
クレジットカードを作れない、住宅ローン審査に通らない、スマホの分割払いができないなどのご事情でお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.金融ブラック状態とは
金融ブラック状態とは、信用情報に事故情報が登録されてローンやクレジットの審査に通らなくなってしまった状態です。
信用情報とは、個人の支払い能力に関する情報をいいます。借入先や借入額、返済履歴や滞納履歴、債務整理履歴などの詳しい情報が登録されています。
クレジットカード会社や消費者金融、銀行などは審査の際に信用情報を参照して「返済能力があるかどうか」を判断します。そこで信用情報に事故情報が登録されて「金融ブラック状態」になると、一切の審査に通らなくなってしまうのです。
実は現在の日本社会内に多くの「金融ブラック状態」の方が存在しています。
具体的にどのくらいの割合の方が金融ブラック状態なのか、参考データをもとに分析してみましょう。
2.CIC統計データからみる金融ブラック状態の割合
今回参考データとしてとりあげるのは「CIC」による開示情報です。
CICは日本に3つある信用情報機関の1つであり、信販会社やクレジットカード会社が中心となって組織しているものです。
ほとんどのクレジットカード会社や信販会社はCICに加盟していますし、消費者金融会社や金融機関の中にもCICに加盟している会社が多数あります。
CICのデータをみれば、だいたいの「金融ブラック状態の人の割合」を把握できるといえるでしょう。
CICのデータでは「ショッピング(クレジット)」と「キャッシング」に分けて情報開示されているので、それぞれ確認していきます。
2-1.ショッピングクレジットで「ブラック状態」になっている人の割合
ショッピングクレジットサービスには「包括クレジット」と「個別クレジット」の2種類があります。
包括クレジットとは、クレジットカードのように「限度額の範囲でいくらでもショッピング立て替え払いを利用できるサービス」です。
一方個別クレジットはショッピングローンのように「個別の買い物のたびに審査を行って1回ごとにショッピングの立て替え払いを利用できるサービス」です。
異動情報のある人の人数
CICの発表によると、包括クレジットの登録情報は9085万人、そのうち分割払いの残債のある人数が1841万人、そのうち「異動情報」のある人数が114万人となっています。
個別クレジットについてみると、登録情報は7491万人、分割払いの残債のある人数が4494万人、「異動情報」のある人数は282万人となっています。
異動情報とは借金を長期延滞したり債務整理したりすると登録される情報ですから、上記のうち「異動情報」が登録されている人がいわゆる「金融ブラック状態」と考えられます。
異動情報のある金融ブラック状態の人の割合
次に異動情報のある金融ブラック状態の人の割合をみてみましょう。
上記の公表人数のうち、「登録人数」にはカードなどの登録だけしていて、実際にはまったくカードを利用していない人も含まれていると考えられます。「母数」としては適切ではないでしょう。
そこで「現在分割払いを利用している人」を母数として金融ブラックの人の割合を計算してみます。
すると包括クレジットの場合には約6%の人が金融ブラック状態であると試算できます。
個別クレジットの場合にもやはり約6%の人が金融ブラック状態となっています。
これらの結果からすると、少なくとも全体の6%程度の人はCICで異動情報が登録されて金融ブラック状態になっているといえるでしょう。
2021年 割賦販売統計データ
https://www.cic.co.jp/cic/statistics-installment.html
2-2.キャッシングで「ブラック状態」になっている人の割合
いわゆる金融ブラック状態になるのは、ショッピングサービスを利用した方だけではありません。
キャッシング(借金)へのサービスを利用して延滞したり債務整理したりした場合にも異動情報が登録されてブラック状態になります。
そこで、金融ブラック状態の人の割合を計算するには、キャッシングで異動情報が登録された人の割合も確認する必要があるでしょう。
CICでは貸金(キャッシングサービス)に関する統計データも公表されていたので、こちらをみて金融ブラックの人の割合を試算します。
CICの統計によると貸金サービスに登録している人数の総数は7389万人です。そのうち残高のある方は1066万人、うち異動情報が登録されている人が393万人となっています。
ショッピングと同様、「登録人数」には現在借金していない人も多く含まれるので、除外して計算します。
するとキャッシング残高のある人のうち金融ブラック状態になっている人の割合は36.8%にものぼります。
キャッシングサービスの場合、利用者のうち金融ブラックになってしまう方の割合が極めて高いといえるでしょう。
2021年 貸金統計データ
https://www.cic.co.jp/cic/statistics-installment.html
2-3.ショッピングとキャッシングを合計した場合の金融ブラック状態の人の割合は?
いわゆる「金融ブラック状態」には「包括クレジット」で異動情報が登録された人も「個別クレジット」で異動情報が登録された人も「キャッシング」で異動情報が登録された人もすべて含みます。
ただ実際には「包括クレジット」と「個別クレジット」と「キャッシング」のうち複数のサービスを利用している人も多いと考えられます。特にカードキャッシングを利用している方のほとんどはクレジットカードの包括クレジットサービスを利用しているでしょう。
そこで上記の数字を単純に合計するわけにはいきません。
とはいえクレジットサービスの場合には少なくとも利用者の6%程度、キャッシングサービスでは利用者の37%程度が金融ブラック状態になっていることは明らかです。
カードのキャッシングに手を出してしまった時点で「将来返済できなくなってブラックリスト状態になってしまう可能性が極めて高くなる」といっても過言ではない状況といえるでしょう。
2-4.他の信用情報機関も合わせるとブラック状態の割合はさらに高くなる
今回調査したのは、3つの信用情報機関のうち「CIC」のみです。
ただ現実には「JICC」や「KSC」という他の信用情報機関が存在し、こちらにも事故情報が登録される可能性があります。
CICでは情報が登録されなくても、JICCやKSCに事故情報が登録されて金融ブラック状態になってしまう方が少なからず存在するでしょう。
そういった人数を合わせると、全体的な金融ブラック状態の人の割合は上記よりさらに高くなると考えられます。
2-5.他の信用情報機関とも情報共有されている
日本にはCICとJICC、KSCという3つの信用情報機関があり、それぞれ別個に個人信用情報を管理しています。
これら3つの信用情報機関では「CRIN」とよばれるシステムによって異動情報や事故情報を共有しています。
1つの信用情報機関で異動情報が登録されると、基本的に他の信用情報機関へ情報が伝わる仕組みがあるので、別の信用情報機関に加盟している金融業者でもローンやクレジットを利用できなくなると考えましょう。
たとえばカードの返済を長期滞納してCICで異動情報が登録されると、JICCのみ加盟している消費者金融やKSCのみ加盟している銀行などでもキャッシングやローンを利用できない可能性があります。
3.信用情報を確認する方法
上記の検討結果によると、日本ではカードやキャッシング利用者のうち少なくとも6%、可能性として数十%以上もの金融ブラックリスト状態の方が存在する可能性があります。
とはいえ「自分が本当に金融ブラック状態なのかどうかわからない」方も多いでしょう。
金融ブラック状態のままではクレジットカードも発行できませんしショッピングローンも利用できません。住宅ローンや車のローンにも通らないので多大な不利益が及びます。
カードやローンの審査落ちが続くようであれば、一度自分の信用情報を確認してみましょう。
信用情報は、各信用情報機関へ情報開示請求をすれば確認できます。
- CIC
CICでは郵送、WEB上の閲覧申請、窓口申請の3種類の方法を利用できます。
ウェブ上で申請するとその場で信用情報を確認できるので便利です。
ただしウェブ上で確認するにはクレジットカードで代金を払う必要があります。
手元にクレジットカードのない方は、郵送か窓口申請にて対応しましょう。
- JICC
JICCでは郵送、アプリでの申請、窓口申請の3種類の方法を利用できます。
スマホを利用できる方はアプリで申請すると便利でしょう。
ただしアプリで申請すると後日開示書類が郵送されてくるので、アプリ上で確認できるわけでありません。
- KSC
KSCでは郵送による請求方法しか受け付けていません。サイトの専用ページから申請書をダウンロードして、信用情報開示の申請書を送付しましょう。
信用情報開示請求をすると手数料がかかります。
CICやJICCで窓口申請をする場合には500円ですが、その他のケース(ウェブ上、アプリ申請、郵送)では1000円必要となります。すべての信用情報機関で開示請求を行う場合には2000~3000円程度が必要になる計算です。
なお信用情報の開示請求は、3つの信用情報機関すべてに対して行うようおすすめします。
上記のうち、どれか1つにでも情報が登録されていたら他機関にも情報共有されて審査に通らない可能性が高くなるからです。
また利用したいローンやクレジットの会社がどの信用情報機関に加盟しているのかは必ずしも明らかではありません。
すべての信用情報機関で情報を確認しなければ、自分が本当に金融ブラック状態になっていないかの確認が難しくなります。
4.事故情報を消せるケースとは?
実は信用情報に事故情報が登録されて金融ブラック状態になっていても、ときと場合によっては消去できる可能性があります。
- 借り入れ時期が古い場合
- 時効が成立している場合
- 過払い金請求した場合
典型的には上記のようなケースで事故情報を消去できる可能性があり、それ以外にも人違いなどまれに間違って情報登録されている場合があります。
信用情報に事故情報を登録されたままではローンやクレジットカードを利用できず大変不便なので、抹消できる可能性があるなら早期に手続きしましょう。
5.事故情報を消す方法
信用情報から事故情報を抹消するには、どうすればよいのでしょうか?
この場合、本人が信用情報機関へ直接抹消を請求しても受け付けてもらえない可能性が高いので注意しましょう。
手順として、まずは事故情報を信用情報機関へ通知した「貸金業者(あるいは金融機関)」へ連絡を入れる必要があります。
貸金業者から信用情報機関へ「情報が間違っていたから訂正します」という連絡を入れてもらえれば、間違った情報が修正されるという流れです。
ただし貸金業者が対応しない場合には、信用情報機関へ事情を説明して調査を求められるケースもあります。
事故情報を消す手順や流れは状況によっても異なってくるので、ご自身で対応するのが難しい場合には弁護士までご相談ください。
6.信用情報の消去を弁護士に依頼するメリット
誤って登録された事故情報の消去を弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。
6-1.情報を消去できる確実性が高くなる
事故情報を消去する手続きは複雑です。
信用情報機関では氏名などの基本的で明らかな情報の訂正は受け付けていますが、事故情報を消去してほしいと申し入れても簡単には受け入れてもらえません。
適正な手順を踏んでより確実に事故情報を消去するには、弁護士に依頼する必要があります。
信用情報について専門知識をもっている弁護士であれば、状況に応じて貸金業者や金融機関に申し入れを行い、より確実に事故情報を消去できるでしょう。
6-2.スムーズに事故情報を抹消できる
信用情報から事故情報を抹消したい場合「一刻も早くしてほしい」と願う方が多いでしょう。
しかし自分で対応すると、スムーズに手続きを進められないケースがほとんどです。
信用情報機関や業者へ次々に連絡をいれて「たらいまわし」のような状態になり、結局は事故情報を消せなかった、というパターンに陥ってしまう方も少なくありません。
弁護士に依頼すれば適正な方法で手続きを進め、スムーズに事故情報を抹消できるメリットがあるといえるでしょう。
6-3.労力がかからない
自分で事故情報を消去しようとすると、大変な労力がかかってしまうものです。
普段忙しく働いている方の場合、時間や手間をかけられずにどんどん後回しになってしまう可能性もあります。
弁護士に任せればご本人はほとんど何もしなくて良いので労力がかかりません。仕事や家事育児など、必要な作業へ専念できるメリットがあるといえるでしょう。
当事務所では信用情報の調査や訂正に力を入れて取り組んでいます。
実は弁護士や司法書士の中でも信用情報の訂正に専門的に取り組んでいる事務所は多くありません。金融ブラック状態から脱却したい方、見に覚えがないのにローンやクレジットの審査落ちが続いて納得できない方がおられましたら、お気軽にご相談ください。