借金がかさんで返済が苦しくなったとき「おまとめローン(借金の一本化)」を利用する方が少なくありません。
おまとめローンを利用すると、借金が整理されて毎月の返済額も減額されるケースが多く、一定のメリットを得られるでしょう。
すでに借金返済を延滞して「ブラックリスト」状態になっていてもおまとめローンを利用できるのでしょうか?
今回は「おまとめローン」とはどういったものなのか、ブラックリスト状態の方がおまとめローン審査に通る可能性があるのか解説します。
多額の借金をしてしまいブラックリスト状態になった方はぜひ参考にしてみてください。
1.おまとめローンとは
おまとめローンとは、複数の借金を一本化してもらえるサービスです。
たとえば3社から30万円ずつ借り入れをしている方がA社でおまとめローンを利用すると、A社で90万円を借りて今の借入先である3社の借金は完済します。
このように借金を一本化することにより、ばらばらに返済していた借金をまとめて返すことができますし、返済計画のシミュレーションもしやすくなります。
毎月の返済額も減る可能性がありますし、おまとめローンの金利が今までの借金よりも低い場合には有利な条件に変更できるでしょう。
ただしおまとめローンは一種の「借金」であることを忘れてはなりません。おまとめローンを利用しても借金額が減るわけではないので、返済は継続する必要があります。払えなくなったら裁判を起こされたり差し押さえを受けたりする可能性もあります。
またおまとめローンにも利息がつくので、返済額は借入額より高額になります。
おまとめローンは借金問題の根本的な解決方法にはならないケースも少なくありません。
以上が借金を一本化するためのおまとめローンの概要です。
2.おまとめローンのメリット
おまとめローンを利用すると、以下のようなメリットがあります。
2-1.借金が一本化されて支払い漏れが起こりにくくなる
多数の金融業者から借り入れをしていると、どの業者へいつ、いくら返済すればよいのか把握しにくくなるものです。
振り込み送金にしている場合には支払い漏れが起こりやすくなるでしょう。引き落としの場合でも、事前に口座に入金するのを忘れて「引き落とし不能」になる可能性があります。
おまとめローンを利用すれば借金が一本化されるので、支払い漏れは生じにくくなり借金を管理しやすくなるメリットがあります。
2-2.毎月の返済額が低くなる可能性がある
おまとめローンを利用すると、毎月の返済額を抑えられるケースも少なくありません。これまでの借金よりも返済年数を長くしてもらえる可能性があるからです。
たとえば今までの計画では3社へ2年かけて返済する予定であったところ、1社にまとめて返済期間が倍の4年になれば、1ヶ月の返済額は半額になるでしょう(わかりやすくするために利息などの細かい計算を無視しています)。
月々の返済が苦しい方にとってもおまとめローンを利用するメリットがあります。
2-3.金利が低くなって有利な借り換えができるケースがある
おまとめローンと従来の借金の金利を比べると、おまとめローンの方が低くなるケースも多々あります。
金利が低いと総支払額が減る可能性があり、一般的には有利な借り換えとなるでしょう。
ただしおまとめローンは支払い年数が長くなるケースも多く、その場合にはかえって支払利息の総額が高額になるケースもあります。金利は完済するまで発生し続けるからです。
実際に支払利息の金額が減るのか増えるのかについては、おまとめローン申し込み前にシミュレーションをして確認しましょう。
3.おまとめローンのデメリット、リスク
おまとめローンには良いことばかりではありません。デメリットやリスクもあるので注意してください。
3-1.総返済額が高くなる可能性がある
おまとめローンを利用すると月々の返済額は減っても「総返済額」が増えてしまうケースが多々あります。
返済期間が延びて利息がかかり続けるケースがあるからです。
利息は借金を完済するまで発生し続けるので、返済年数が延びれば延びるほど高額になっていきます。たとえ「利率」は減っても「返済期間」が長くなることにより、結局は支払総額が増えてしまう可能性があるのです。
おまとめローンは必ずしも利用者にとって得なサービスとはいえないので注意しましょう。
3-2.かえって借金を倍増させてしまうリスクがある
借金問題解決のためにおまとめローンを利用しても、結局は借金を倍増させてしまう方が少なくありません。
おまとめローンによってせっかく借金を完済しても、また以前の借入先に借り入れを申し込んでしまうからです。
たとえばA社、B社、C社からそれぞれ50万円ずつ借りている方がD社でおまとめローンを利用し、A社~C社へ完済したとしましょう。この時点ではD社から150万円の借金のみがある状態です。
ところが後にA社やB社から借金の勧誘がきてついつい借り入れをしてしまい、気づいたらA社~C社からまた50万円の限度額まで借りてしまう方が多いのです。するとD社のおまとめローンも合わせて借金が300万円にまで倍増してしまいます。
おまとめローンには「かえって借金を増やしてしまう落とし穴」もあるので十分注意しましょう。
3-3.返済できなくなったら差し押さえを受ける
おまとめローンも一種の借金です。
返済ができなくなったら貸金業者や金融機関から一括請求されますし、それでも返済できなければ訴訟や支払督促を申し立てられたり給料等を差し押さえられたりする可能性もあります。
おまとめローンを利用したからといって、必ずしも借金問題を解決できるわけではありません。その後持続的に返済をしなければならないので、利用の際には「きちんと返済していけそうか」シミュレーションしてから判断しましょう。
4.おまとめローンの種類、実施している金融業者
おまとめローンを実施している金融業者にはどういったものがあるのでしょうか?
以下でおまとめローンの「種類」や借入先をご紹介します。
4-1.銀行や信用金庫
メガバンク、地方銀行、信用金庫などの金融機関ではおまとめローンを実施しているケースがよくあります。利率は比較的低めに設定されている例が多数です。
4-2.消費者金融などの金融業者
消費者金融や信販会社でもおまとめローンサービスを実施している例があります。
ただしこういった貸金業者の場合、利率は高めになりやすいので注意しましょう。
4-3.ろうきん(労働金庫)
ろうきん(労働金庫)は「労働者」のための金融機関です。労働組合や生協の会員が相互に助け合うために組織しており、「福祉的」な目的をもっています。労働組合員は、特に有利な条件で貸付を受けらやすくなっています。
すべてではありませんが、ろうきんでも多重債務者向けに「負債整理資金融資」というおまとめローン類似のサービスが行われているケースがあります。金利も低めに設定されているので、利用できれば返済が楽になるでしょう。
4-4.不動産担保ローン
不動産担保ローンとは、不動産を担保にした貸付です。
高額な貸付をするときには、担保がないと貸し付ける側のリスクが高くなってしまうので、不動産を担保に入れることにより、不払いに備える方法です。不動産を担保に取る分、無担保融資より金利が低めに設定されているケースが多数となっています。
自宅を担保に入れて貸付を受ける方が多くなっていますが、自宅の住宅ローンを返済中でも不動産担保ローンを利用できるのが一般的です。
ただし不動産担保ローンを利用すると、万が一の場合に自宅を競売にかけられるリスクが発生するので注意しなければなりません。
また、後日に住宅ローン特則つきの個人再生をしたい場合にも、不動産担保ローンがあると障害となる可能性が高まります。住宅ローン特則を利用するには「住宅ローン以外に抵当権がついていないこと」を要件とされるからです。
不動産担保ローンによって借金を一本化するときには、将来返済不能となるリスクがないか、必ず最後まで支払いができそうかなど、しっかりシミュレーションをして計画的に利用しましょう。
4-5.日本政策金融公庫
日本政策金融公庫でもおまとめローン類似のサービスを利用できる可能性があります。
ただし公庫の場合、一般のカードローンや消費者金融などの借金の一本化はできません。
一本化できるのは以下のような借金です。
- 教育ローン
他社で教育ローンを利用している場合、日本政策金融公庫で教育ローンを借り入れる際に一本化してもらえる可能性があります。
- 公庫の借金を一本化
日本政策金融公庫では多種類の貸付を行っているため、いくつかの融資をばらばらに申し込んで個々に返済している方も少なくありません。このように複数の公庫の借金を利用している場合、おまとめサービスで一本化できる可能性があります。
たとえば「セーフティネット貸付」を利用している方が公庫から新たに貸付を受ける場合には、公庫の借金をまとめて一本化して一元管理できるので、条件に該当する方は公庫へ問い合わせてみてください。
5.ブラックリスト状態でもおまとめローンを利用できる?
借金を長期に渡って延滞したり過去に債務整理をしたりして「ブラックリスト」状態になっていても、おまとめローンを利用できるのでしょうか?
ブラックリスト状態とは、信用情報に「事故情報」が登録された状態です。
各種の金融機関では融資の審査の際に信用情報を参照するので、そのときに事故情報が登録されていると「返済されないリスクが高い」と判断されて審査落ちしてしまう可能性が極めて高くなります。
ブラックリスト状態になっていると、ほとんどのケースで融資の審査に落とされると考えましょう。
5-1.おまとめローンでも審査が行われる
残念ながら、おまとめローンの場合にも信用情報の審査は行われます。
おまとめローンも一種の貸付(借金)なので、やむを得ないといえるでしょう。
消費者金融や信販会社はもちろんのこと、銀行や地元密着型の信用金庫、労働者の味方で福祉目的で設立された「ろうきん」、政府系金融機関である「日本政策金融公庫」でも信用情報の審査は行われます。
信用情報に事故情報が登録されている状態では、あらゆる金融機関においておまとめローンを利用するのが難しい状況といえるでしょう。
不動産担保ローンの場合、「不動産を担保にするので借り入れる本人の信用が低くても融資を受けられるのでは?」と考えるかもしれません。
しかし不動産を担保にするとしてもやはり本人の返済能力は重要な要素となるので、ブラックリスト状態では利用が困難と考えましょう。
5-2.比較的審査に通りやすい金融機関
ブラックリスト状態でも、比較的審査にとおりやすいとされる金融機関はあります。
たとえば中小の貸金業者が行っているサービスの場合、申込人の個別の収入状況や生活状況にかんがみて、融資してもらえる可能性がないとはいえません。
ただし中小の貸金業者の融資条件は利用者にとって不利になるケースが多いので注意してください。融資条件がゆるい分、金利を高くして採算をとろうとする業者が多いからです。
また中小の貸金業者は取り立ても厳しいところが多く、返済を滞納したら厳しく督促されたりすぐに支払督促を申し立てられたりして、債務者が疲弊してしまう事例も少なくありません。
軽い気持ちで街金のおまとめローンを申し込むと大きなリスクを背負ってしまう可能性があるので、利用の際には慎重に検討してください。
6.おまとめローンと債務整理の比較
すでに多額の借金があって返済が難しくなっているなら、おまとめローンよりも債務整理で解決した方がよいケースも多々あります。
おまとめローンはあくまで「借金の一種」であり、借金問題の根本的な解決につながりにくいからです。債務整理をしたら借金が大きく減額されたり免除してもらえたりするので、借金問題を根本的に解決できるでしょう。
特に返済を滞納してブラックリスト状態になってしまっているなら、おまとめローンを申し込んでも審査落ちしてしまう可能性が高いでしょう。債務整理の方が現実的な解決方法といえます。
7.信用情報の訂正や借金問題の解決は弁護士へご相談ください
信用情報に事故情報が登録されてブラックリスト状態になっていても、一定の条件を満たせば訂正してもらえるケースがあります。事故情報を消去できればおまとめローンやカードローンなども利用できる可能性があるので、現状に疑問を抱いている方は一度弁護士へ相談してみてください。
またおまとめローンも利用できないほどに借金がかさんでいるなら、債務整理で解決するようお勧めします。
当事務所では信用情報の訂正や借金問題の解決に力を入れて取り組んでおり、高い解決実績を誇っています。無料相談も承っていますので、お困りの方がおられましたらお気軽にお問い合わせください。