過去に自己破産などの債務整理をして「金融ブラック」の状態になっていたら、起業や資金調達はできないのでしょうか?

 

実はブラック状態でも起業はできますが、借り入れによる資金調達は困難となる可能性が高くなります。

 

今回は金融ブラックの方が起業、資金調達する方法をご紹介しますので、過去に借金滞納や債務整理をして信用情報に事故情報が登録されている方はぜひ参考にしてみてください。

 

1.金融ブラック状態でも起業は可能

金融ブラック状態の場合、そもそも起業ができるのか不安に感じる方も多いでしょう。

結論的に、金融ブラック状態でも起業はできます。

個人事業を興すだけではなく、法人を設立したり代表者へ就任したりもできるので、不安に思う必要はありません。

 

1-1.金融ブラック状態とは

金融ブラック状態とは、信用情報に事故情報が登録されてローンやクレジットの審査に通らなくなった状態です。

信用情報に事故情報が登録されていると、融資の審査の際に金融機関や貸金業者に照会されます。その結果「返済を受けられないリスクが高い」と判断されて、融資の判断がおりない可能性が高くなるのです。

 

金融ブラック状態になるケース

以下のようなトラブルが起こると、信用情報に事故情報が登録されて金融ブラック状態になるリスクが発生します。

 

  • キャッシングやカードローンを2~3ヶ月以上、長期延滞
  • クレジットカードの強制解約
  • スマホの分割払いを2~3ヶ月以上長期延滞
  • 住宅ローンを3~6ヶ月以上長期延滞
  • 5~10年以内に任意整理、個人再生、自己破産などの債務整理を行った

 

金融ブラック状態になると、銀行ローンだけではなくクレジットカードも発行できず、消費者金融すら利用できなくなってしまいます。大変不便な状態になるといえるでしょう。

 

1-2.信用情報と起業は関係がない

起業と信用情報には直接の関係がありません。

たとえば起業の際、国や法務局、税務署などによって信用情報を参照される可能性はありません。金融ブラックの方が役員や代表者になっている法人でも登記を受け付けてもらえます。

今の法律では「資本金が1円」でも法人を設立できるので、お金がなくても起業しやすくなっているといえるでしょう。個人事業であれば、法人を設立する費用すらも不要です。

 

起業後の資金調達の目処さえ立てられれば、金融ブラック状態の方でも問題なく事業を興せるでしょう。

 

2.自己破産していても代表者や役員になれる

過去に自己破産した経験のある方は「自己破産している以上、代表者になれないのでは?」と心配されるケースがよくあります。

結論的に、過去に自己破産していても問題なく起業できますし、代表者への就任も可能なので安心しましょう。

 

代表取締役や役員は資格制限の対象にならない

自己破産には「資格制限」というルールが適用されます。資格制限とは、自己破産手続き中に一定の職業や地位につけなくなることです。

たとえば弁護士や司法書士、税理士、建士、不動産鑑定士、騎手、調教師、保険外交員、警備員などの仕事が制限対象とされています。

 

会社の役員は資格制限の対象になりません。

ただし自己破産手続きが開始すると、役員と会社との「委任契約」が終了してしまいます。その時点では、役員をいったん退任せざるを得ません。

その後、速やかに再選任すれば、もとのように役員の仕事を継続できます。

 

このように、会社役員は自己破産の資格制限の対象にもなっていないので、過去に自己破産した人はもちろんのこと、自己破産手続き中の方でも代表者や役員になれます。

起業の際にも特段の支障はないので安心しましょう。

 

3.ブラック状態だと融資を受けられない

金融ブラックの方が起業する際には、「融資」を受けられないので事業の継続に支障が生じるリスクがあります。

 

以下で起業の際に利用できる主な融資先や金融ブラック状態の方への取り扱いについて、みていきましょう。

 

3-1.起業の際の主な融資先

事業内容にもよりますが起業時や企業直後には多額の運転資金を要するケースが多いので、融資を利用する方が多数です。中でも以下のような融資先が人気となっています。

 

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、国が100%出資して運営されている金融機関です。

起業家を支援するため、有利な条件で貸付を行っています。

融資額は最大3000万円、無担保無保証で貸付を受けられますし、開業前でも融資を申し込むことができます。

 

ただし貸付の際には審査が実施されるので、必ず融資を受けられるとは限りません。綿密に練られた事業計画書や資金繰りに関する計画書などを提出する必要があります。

 

制度融資

制度融資は自治体が窓口となって貸付を行う制度です。信用保証協会が保証をして民間の金融機関から借り入れを行います。無担保無保証で利用できて金利も低いので、起業家にとってはメリットが大きいといえるでしょう。開業前の申し込みも受け付けられています。

また信用保証協会が保証するので、一般の融資よりも審査に通りやすいともいわれています。

 

ただし利用する際には信用保証協会に保証料を払わねばなりません。また貸付を行う金融機関と信用保証協会の両方で審査が行われます。融資を受けられるまでに時間がかかりがちな点もデメリットといえるでしょう。

 

信用金庫からの融資

地域の信用金庫から融資を受ける方法もあります。信用金庫は地元の事業を支援してくれるケースが多く、積極的に開業支援してもらえる可能性があります。

信用金庫と良好な関係を築ければ将来、資金繰りに困ったときに融資をしてもらえる可能性があります。信用金庫の融資先を取引相手として紹介してもらえるケースも少なくありません。

 

起業の際、信用金庫から借り入れを行って実績を作っておくメリットは大きいといえるでしょう。

 

3-2.信用情報は参照される

日本政策金融公庫でも制度融資でも信用金庫の融資でも必ず審査が行われ、申込人の信用情報を参照されます。

信用情報には以下のような情報が記録されています。

  • 現在の借入先や借入金額
  • 返済状況
  • 過去の債務整理履歴
  • 最近のクレジット・ローンの申し込み履歴

 

信用情報に不利な情報が登録されていると、審査に通らない可能性が高くなります。

 

3-3,融資の基準

では金融ブラック状態の場合でも、日本政策金融公庫や制度融資、信用金庫の融資などを利用できるのでしょうか?融資の際の審査基準を確認しましょう。

 

たとえば日本政策金融公庫の場合には、以下のような事項について審査が行われます。

  • キャッシングやクレジットカードの借入額
  • カード代金を滞納していないか
  • 税金を滞納していないか
  • 携帯電話代を滞納していないか
  • 任意整理、個人再生、自己破産の経歴はないか

 

借入額が多いと審査に通りにくい

すでに消費者金融やクレジットカードなどで多額の借金をしていると、さらに融資を受けるのは難しくなります。返済困難になるリスクが高いと判断されてしまうからです。

この点は公庫に限らず、制度融資や信用金庫でも同様です。

滞納していると審査に通らない

キャッシングやカードローン、クレジットカードなどの借金を滞納していると、信用情報に滞納情報が登録されます。スマホ代を分割払いにしているケースで2ヶ月以上滞納した場合にも同様です。

信用情報を照会した結果、各種の滞納が発覚したら審査には通りにくくなるでしょう。

 

過去に債務整理していると審査に通らない

過去に任意整理や個人再生、自己破産をしていると信用情報に事故情報が登録されます。こうした情報を照会されたら融資の審査に通るのは極めて困難になると考えましょう。

 

税金を滞納していると審査に通らない

日本政策金融公庫は国が出資する金融機関なので、税金滞納に関する審査も実施します。

住民税、固定資産税や所得税、消費税などの各種税金を未納状態のまま放置していると、審査に落とされる可能性が高いと考えましょう。

なお信用金庫などの民間金融機関の場合、税金滞納に関する調査は行われないケースが多数あります。税金を払えていない場合、公庫よりも民間金融機関へ融資を申し込む方がよいでしょう。

 

過去に借金を滞納したり債務整理したりして信用情報に滞納情報や事故情報が登録されていると、どこの金融機関でも審査を通過するのが困難となってしまいます。

 

3-4.債務整理後、事故情報が登録される期間

いったん債務整理によって事故情報が登録されても、一生消えないわけではありません。

債務整理の種類にもよりますが、以下の年数が経過すれば情報が消去されるケースが多数です。

 

  • 任意整理の場合…任意整理後約5年間
  • 個人再生、自己破産の場合…手続き後約10年間

 

上記の期間が経過したら、過去に債務整理をした場合でも公庫などで融資をしてもらえる可能性が高くなります。

なお個人再生や自己破産をした場合、任意整理よりも事故情報の登録期間が長くなるケースが多いので注意しましょう。

 

3-5.どうしても借り入れをしたい場合の対処方法

起業の際、どうしても資金調達のために借り入れをしたいなら以下のように対応してみてください。

親族や友人に頼んでみる

親族や友人などの個人には信用情報を参照する権限がありません。資金が必要な状況を説明して納得してもらえたら、お金を貸してもらえる可能性があるでしょう。

 

ただし親族や友人から借りて返済できなくなると、人間関係が壊れてしまう危険が大きく高まります。「絶対に返済できる」かどうかしっかり検討してから融資をお願いしましょう。

 

闇金は利用しない

金融ブラック状態になってしまうと、まともな金融機関や貸金業者などから貸付を受けるのは難しくなってしまいます。

そこで闇金や「ブラックでもOK」などを標榜している金融業者へ貸付を申し込んでしまう方が少なくありません。

 

しかしそのような業者を利用すると、利息が高額であったり違法な方法で取り立てを受けたりして、結局は首を絞めてしまいます。事業の継続どころではなくなってしまうでしょう。

 

起業に際して資金が必要でも、闇金や「ブラックでも貸し付ける金融業者」は絶対に利用しないでください。

 

4.金融ブラック状態で資金調達する融資以外の方法

金融ブラック状態の場合、公的機関や民間金融機関からの「融資」を受けるのは困難で、ほとんど不可能といってもよい状況です。ただし融資以外の資金調達方法であれば利用できる可能性があります。

 

以下で金融ブラック状態の起業家が利用できるお勧めの資金調達方法をご紹介します。

 

4-1.助成金、補助金

助成金や補助金は、国や自治体が個人や法人を支援するために給付してくれるお金です。

厚生労働省が管轄するものは「助成金」、経済産業相が管轄するものは「補助金」といわれており、自治体が運営するものについてはどちらの名称が使用されるケースもみられます。

 

各助成金や補助金によって異なる「条件」が設定されており、条件を満たす場合に申請すると、定められたお金が給付されます。ただし審査があるので、必ず支援を受けられるとは限りません。審査の厳しさについても各助成金や補助金の内容によって異なります。

 

金融ブラック状態でも利用できる

助成金や補助金の審査では信用情報を参照されません。融資と違い、返済を予定していないためです。金融ブラック状態であっても条件さえ満たせば利用できる可能性があります。

また融資と異なり「返済は不要」です。起業後に返済によって資金繰りが圧迫される可能性がないことも、起業家にとって大きなメリットとなるでしょう。

 

創業補助金

起業時によく利用される補助金として「創業補助金」が有名です。これは中小企業庁が主体となって運営している補助金制度であり、上限額は200万円、補助率は3分の2とされています。

起業時に資金が必要なら、申請を検討してみてください。

 

4-2.クラウドファウンディング

金融ブラック状態の方でも利用できるお勧めの資金調達方法として「クラウドファウンディング」もあります。これは、クラウド上で事業への支援者を公募する方法です。

多くの場合、支援者に対して何らかのリターンを約束し、それと引き換えに起業時の金銭的な支援をしてもらいます。

たとえば飲食店であれば「無料券」をリターンとして配布して資金を募る、商品販売の場合には支援者に商品を送付するなどのリターンをつけるケースがあります。有料サービスの無料利用権をリターンとしてもかまいません。

 

クラウドファウンディングは専用サイトを利用すれば誰でも簡単に利用できます。失敗しても損失はないので、資金調達が必要な際は気軽に検討してみてください。

 

5.信用情報や借金問題、起業支援はご相談ください

当事務所では間違って登録された信用情報の訂正、借金問題の解決、起業家の支援などの法律業務に力を入れて取り組んでいます。信用情報に事故情報が登録された場合でも、状況によっては削除できる可能性があります。企業に際しての法的アドバイスや各種規定の作成、書類作成代行なども承ります。

 

お悩みの方がおられましたらお気軽にご相談ください。

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