信用情報に事故情報が登録されて「金融ブラック」状態になったら、カードローンや消費者金融は一切利用できなくなってしまいます。

どうしてもお金が必要なとき、どうすればよいのでしょうか?

 

実は金融ブラック状態でも「ファクタリング」なら利用できる可能性があります。ただしファクタリングには違法業者もあるので、利用の際には注意しなければなりません。

 

今回は金融ブラックでも利用できる「ファクタリング」の仕組みをデメリットや注意点も合わせて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

1.ファクタリングとは

過去に借金返済を長期延滞したり債務整理したりすると、信用情報に事故情報が登録されて一定期間、消費者金融や銀行などでの融資を受けられなくなってしまいます。

 

そういった状況でも利用できる可能性があるのが「ファクタリング」です。

 

ファクタリングとは「債権譲渡」を利用した資金調達方法をいいます。

債権譲渡とは、他者への金銭請求権を譲り渡す契約です。今自分がもっている他者への金銭請求権を業者に買い取ってもらうことにより、譲渡代金を受け取って資金調達する方法です。

 

ファクタリングを利用するときには債権を買い取ってくれる人を探さねばなりません。一般的には専門の「ファクタリング業者」があるので、そちらに債権を買い取ってもらいます。

 

ファクタリングの具体例

たとえばAさんがBさんに対する100万円分の債権を持っているとしましょう。このときAさんはファクタリング業者へBさんに対する100万円分の債権を90万円で買い取ってもらいます。するとAさんは債権譲渡と同時に90万円の現金を入手できて資金調達に成功します。

 

その後、債権の支払時期が来たらAさん本人がBさんから100万円を回収してファクタリング業者へ支払いをしたり、もしくはファクタリング業者が自らBさんに請求して100万円を回収したりします。

 

Aさんが債権回収するのかファクタリング業者が債権回収するのかはケースバイケースで、債権譲渡契約時にAさんとファクタリング業者が話し合って決定します。

 

このようにファクタリングを使うと売掛金などの債権を早期に現金化して資金調達できるので、中小事業者によってよく利用されています。

 

2.金融ブラックでもファクタリングを利用できる

では金融ブラック状態でもファクタリングを利用できるのでしょうか?

信用情報に事故情報が登録されていると、融資の審査の際に信用情報を参照されるので融資の決定がおりません。

「ファクタリングの際にも審査が行われて債権譲渡に応じてもらえないのでは?」と心配になる方もおられるでしょう。

結論的に、金融ブラック状態でもファクタリングであれば審査に通過できる可能性があります。現実にブラック状態の個人事業主の方でもファクタリングで資金調達している例が多数あるので、心配しすぎる必要はありません。

 

ファクタリングの審査の仕組み

なぜファクタリングは金融ブラック状態でも利用できるのでしょうか?

 

確かにファクタリングの際にも「審査」が行われますが、その方法は銀行や公庫、消費者金融などの審査とは大きく異なるからです。

 

ファクタリングの場合、債権の譲渡人(資金調達を受ける人)ではなく「第三債務者(譲渡される債権の債務者)」の信用が問題になります。

ファクタリングでは、債権の譲渡人が債務を支払うわけではありません。支払いをするのはあくまで「第三債務者」です。譲渡人に信用がなくても第三債務者に信用があれば、債権回収できる可能性が高いといえるでしょう。

そこで譲渡人の審査は行われず、第三債務者に関する審査が実施されるのが通常です。

たとえば第三債務者の事業規模、売上高、これまでの滞納歴、上場企業かどうかなどが審査対象事項となります。

 

またファクタリング業者は「貸金業登録」をしていないケースも多く、そもそも信用情報を参照する権限がありません。譲渡人が金融ブラック状態でも、ファクタリング業者にとっては知る方法がないのです。

 

以上のような事情により、ファクタリングにおいては譲渡人が金融ブラック状態でも審査に対する影響はほとんどないと考えましょう。第三債務者に信用があれば、債権を譲渡して融資を受けられる可能性が高くなります。

 

3.ファクタリングのメリット

ファクタリングを利用すると以下のようなメリットがあります。

3-1.早期に資金調達できる

ファクタリングを利用すると、早めに資金調達できるケースが多数です。

利用するファクタリング業者にもよりますが、早い場合には「即日」で譲渡代金が振り込まれます。

通常の銀行や公庫のローンであれば数週間~1ヶ月以上かかるケースも少なくありません。

早期に資金調達できれば資金繰りが楽になるので、事業者にとってはメリットが大きくなるでしょう。

 

3-2.債務者の倒産や不払いリスクがなくなる

ファクタリングを利用すると、債務者が倒産した場合や不払いを起こした場合のリスクはファクタリング業者が負担します。譲渡代金を受け取った後に第三債務者が倒産した場合でも、譲渡人はファクタリング業者へ受け取ったお金を返さなくてよいからです。

 

自社で債権管理していると、どうしても債務者が倒産したり不払いを起こしたりした場合のリスクが心配となるでしょう。ファクタリングを利用すればそういった心配はなくなるのでメリットが大きいといえます。

 

3-3.銀行ローンを利用できない状況でも資金調達できる

過去に借金の長期延滞や債務整理をして金融ブラック状態になっている方や、すでに多額の借り入れをしてこれ以上の融資が難しい方、決算内容が芳しくない会社など「銀行などにおける通常の融資」を受けられない方も少なくありません。

そういった状況であってもファクタリングであれば利用できる可能性があります。

ファクタリングの審査は銀行や公庫などの融資とはまったく異なる基準で行われるからです。

 

柔軟な審査によって資金調達しやすい点もファクタリングのメリットといえるでしょう。

 

4.ファクタリングのデメリット

一方でファクタリングにはデメリットもあるので注意しなければなりません。

4-1.手数料が高い

ファクタリングを利用すると、高額な手数料が発生するケースが多数です。一般的には譲渡債権額の10~20%程度の手数料がかかると考えましょう。

たとえば100万円の債権を譲渡しても、支払われるのは80万円程度となる可能性があります。

ファクタリングには「貸金業法」や「利息制限法」が適用されないので、手数料の金額に制限がありません。年利になおすと100%を超えるケースも少なくないのです。ファクタリングを繰り返していると、利益がどんどん目減りして首を絞める可能性があるでしょう。

 

ファクタリングを検討する際には手数料についても十分理解したうえで、計画的に利用する必要があります。

 

4-2.事業者しか利用できない

ファクタリングは、基本的に「事業者向け」の資金調達方法です。

法人だけではなく個人事業主も利用できますが、一般の消費者は利用できません。

ファクタリングのためには「譲渡できる債権」が必要だからです。

 

事業者であれば取引先への売掛債権をもっているので、これを譲渡してファクタリングを利用できます。

一般の消費者は譲渡できるような債権をもっているケースは少ないでしょうから、ファクタリングを利用して資金調達できません。

 

たとえば会社員や主婦、学生などの方はファクタリングを利用できないと考えましょう。

ただし副業をしている方で売掛先がある場合などにはファクタリングを利用できる可能性があります。

 

4-3.違法なファクタリング業者が存在している

ファクタリングを利用するとき「違法業者」の存在にも注意しなければなりません。

ファクタリングには特別な資格は不要ですが、悪質業者は存在します。

 

たとえば以下のような場合にはファクタリング業者が違法となる可能性が濃厚です。

買戻特約をつける業者は危険

ファクタリング契約に「買戻特約」をつけられる場合、ファクタリング業者が違法業者である可能性が高くなります。

買戻特約とは、第三債務者からの債権回収が不可能となったときに譲渡人がファクタリング業者から債権を買い戻さなければならないとする特約です。

たとえばA社がB社に対する100万円の債権をファクタリング業者へ譲渡して80万円を受け取ったとしましょう。ところがB社が倒産してしまい、ファクタリング業者はB社から100万円を回収できませんでした。

通常であればA社は受け取った80万円をファクタリング業者へ返還する必要はありません。

しかし買戻特約がついている場合には、A社はファクタリング業者へ80万円を返還しなければなりません。100万円の債権を買い戻さなければならないからです。

このように、買戻特約がついていると、譲渡人が最終的な不払いリスクを負わねばなりません。多くの裁判例において、このような「買戻特約」は債権譲渡の性質に反して違法と判断されています。

 

ファクタリングを利用するとき、くれぐれも「買戻特約」をつけるような業者を利用しないように注意してください。

 

給与ファクタリング業者は違法

ファクタリングを利用できるのは「事業者」であり、一般の会社員や消費者は利用できない、とご説明しました。

しかし中には会社員やアルバイトなどの方を対象に「給与ファクタリング」を実施する業者が存在するので注意が必要です。給与ファクタリングは違法となる可能性が極めて高いので、絶対に利用してはなりません。

 

次項でなぜ給与ファクタリングが違法なのか、詳しくご説明します。

 

5.違法な「給与ファクタリング」に要注意

給与ファクタリングとは、「給料」を譲渡債権とするファクタリングです。

 

実は会社員の給料は事業者の売掛金などと同様「債権」の一種に分類されます。会社員が雇用契約にもとづいて会社へ有している「給与債権」となり、賞与や退職金も同じ扱いです。そこで理論的には「給料」「ボーナス」「退職金」を債権譲渡してファクタリングを受けることも可能と考えられます。これを「給与ファクタリング」といいます。

 

給与ファクタリングを利用する場合、会社員が給料をファクタリング会社へ譲渡して手数料を割り引いた譲渡代金を受け取り、給料が入金された時点で給与ファクタリング業者へ全額を支払います。

 

現実に多数の給与ファクタリング業者が存在しているので、発見して利用しようと考える方もいるかもしれません。

 

しかし給与ファクタリングは裁判所でも「違法」と判断されており、非常に危険です。絶対に利用してはなりません。

 

給与ファクタリングが違法な理由

なぜ事業者の売掛金ファクタリングは合法であるにもかかわらず、サラリーマンの給与ファクタリングは違法なのでしょうか?

 

それは給与ファクタリングの場合、ファクタリング業者がほとんどリスクを負わないのに高額な手数料をとるからです。

給与ファクタリングは実質的には「金銭貸付」と同じであり、高額な手数料は「貸金業法」や「利息制限法」を潜脱する違法行為と考えられています。

 

給料には事業者の売掛金と異なり、ほとんど確実に会社から支払われる性質があります。そこでファクタリング業者は不払いのリスクをほとんど負いません。それにもかかわらず高額な手数料を受け取れるのは、不合理と考えられるでしょう。

 

また労働基準法上、給与は「直接労働者へ払われるべき」とされています。この規定からすると、給与債権は譲渡を前提としていないといえるでしょう。

 

こういった事情により、多くの裁判例で「給与ファクタリングは実質的に貸金契約」であり、「給与ファクタリング業者は貸金業法に違反する」と判断されています。つまり給与ファクタリング業者は「闇金」と同じという理解です。

 

会社員やアルバイト、主婦などの方が金融ブラック状態になってお金に困っても、給与ファクタリングに手を出してはなりません。

 

借金に頼らず行政支援などによって生活を建て直せる可能性もあるので、困ったときには弁護士へ相談してみてください。

 

6.信用情報の訂正や資金調達に迷ったときにはご相談ください

信用情報に事故情報が登録されて金融ブラック状態になっていても、状況によっては事故情報を消去できる可能性があります。

また事業者がファクタリングを利用したい場合には、合法的な業者かどうかを見極めなければなりません。合法的な業者であっても頻繁に利用するとかえって資金繰りを悪化させてしまう可能性があります。

会社員の方は、間違って給与ファクタリングを利用してしまわないよう注意してください。

 

当事務所では、弁護士が信用情報の訂正や負債の整理、資金調達方法のアドバイスなどを常時行っています。個人の方でも法人の方でもご相談を受け付けていますので、お悩みごとがありましたらお気軽にご相談ください。

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