
信用情報には本人のローンやクレジットカードの利用履歴や返済履歴などの重要な個人情報が登録されています。誰かに勝手に見られたら重大なプライバシーの侵害になるでしょう。
たとえば同居の家族が本人の知らない間に信用情報の開示請求をできるのでしょうか?
基本的には不可能ですが、一定の条件を満たせば開示請求される可能性もあります。
今回は本人以外の人や企業が信用情報を確認できるケースや方法について解説します。ご自身の信用情報の内容や管理方法に関心のある方はぜひ、参考にしてみてください。
1.信用情報の開示は本人による申請が必要
信用情報機関へ信用情報の開示請求をすると、登録されている内容が開示されます。開示書類には以下のような情報が書かれています。
- どこの業者からどのような借入をしているか
- 契約額、契約の種類
- 残高
- 直近の返済履歴
- 直近の申込み状況
- 延滞の有無
- 代位弁済などの事故の有無
もしも家族などにみられたら、どういった借金があるのかなどすべて知られてしまうといってよいでしょう。
本人が信用情報の開示請求をする方法
各信用情報機関では、以下のような方法で本人による開示申請を受け付けています。
- 窓口での申請
JICC、CICでは各地の事業所における申請を受け付けています。
- 郵送による申請
JICC、CIC、KSCすべての信用情報機関において、郵送での開示申請を受け付けています。
- Web場の閲覧
CICではweb上からの申請を受け付けています。web申請をすれば、その場で信用情報を閲覧できます。
- アプリによる申請
JICCでは専用アプリでの申請を受け付けています。アプリで申請した場合、申請後10日程度で自宅宛に開示書類を送ってもらえます。
信用情報の開示請求できるのは、基本的に本人のみです。信用情報は非常に重要な個人情報なので、第三者が勝手に閲覧したり開示書類の郵送を依頼したりできません。同居の家族であっても同じことです。
自分以外の人や企業が適法な方法で勝手に開示請求する可能性は「ほとんどない」といってもよいでしょう。
2.本人以外の第三者が確認できる2つのパターン
では本人以外の第三者が信用情報の開示請求できるケースは一切ないのでしょうか?
実は以下の2つのパターンにあてはまると、本人以外の第三者であっても信用情報の開示請求が可能となります。
2-1.信用情報機関に加盟している金融機関が照会
1つ目として、信用情報機関に加盟している貸金業者や金融機関が情報照会する可能性があります。
そもそも信用情報管理の制度が作られたのは、貸金業者や金融機関が適切に個人の信用情報を確認し、高額過ぎる貸付を防いだり多重債務者への貸付を控えたりするためです。
そこで貸金業者や金融機関は必要に応じて個人の信用情報を照会する権限を与えられています。
もちろん加盟している貸金業者や金融機関はきちんと国や都道府県などによって認可を受けた団体に限られており、誰でも信用情報機関に加盟できるわけではありません。登録貸金業者や銀行など、個人情報をしっかり管理している業者のみです。取得された情報は個人情報保護法などの規定に従って適正に取り扱われるので、漏えいされる心配はありません。
また加盟会員であっても、やみくもに情報を取得できるわけではありません。基本的には貸付やカード発行の審査のために必要な範囲でのみ、情報照会できます。「本人の返済能力を確認する目的」以外では取得できないと考えましょう。
たとえば個人へダイレクトメールを発送するリストを作るためや、就職採用の選考に利用するために情報を取得してはなりません。
こうした目的外の情報照会を行うと、信用情報機関への加盟を取り消されるなどのペナルティが課される可能性もあります。
また貸金業者や銀行に勤めている人の中でも、情報開示の専門部署に所属している人にしか開示請求はできません。知り合いに銀行員やクレジットカード会社の社員の方がいても、そういった人が個人的に情報照会して調べることはできないので安心しましょう。
このように、信用情報機関であってもやみくもに信用情報開示はできず、情報は極めて厳重に管理されています。
2-2.代理人として開示請求
2つ目の方法は、「本人の代理人」として信用情報開示請求を行う場合です。
本人が「委任状」を書けば、第三者が信用情報機関へ代理で情報開示請求できます。
その際には以下の書類が必要となります。
- 信用情報開示申込書
信用情報機関ごとに専用書式があるので、代理人が必要事項を記入して作成します。
- 委任状
本人による委任状です。本人の実印による押印が必要です。
- 本人の印鑑登録証明書
本人の印鑑登録証明書を提示しなければなりません。
- 本人の身分証明書
本人の運転免許証、保険証などの身分証明書が必要です。
- 代理人の本人確認書類
代理人の本人確認書類も要求されます。CICの場合2通用意しなければなりません。
このように「本人の印鑑登録証明書」や「本人の身分証明書」を添付しなければならないので、まったくの第三者が勝手に申請するのはほとんど不可能といえるでしょう。
同居の家族であっても本人の承諾なしに申請するのはかなり難しくなります。
3.要注意!信用情報を第三者に勝手に見られてしまうパターン
では、家族が信用情報開示請求する可能性は絶対にないのでしょうか?
実はそういうわけでもありません。以下で自分が意識していないのに第三者に信用情報を見られてしまう典型的なパターンを2つ、ご紹介します。
3-1.家族が勝手に申請する可能性について
まず家族が委任状を偽造する可能性があります。
本人のいない間に勝手に本人の身分証明書を持ち出し、委任状を偽造して印鑑登録証明書の発行を受け、申請してしまったらどうなるでしょうか?信用情報機関としては、委任状が偽造かどうかはわかりません。書類が揃っていたら開示に応じてしまうでしょう。
自宅に書類が届いたときに家族が受け取ってしまったら、中身をみられてしまう可能性もあります。
このように、委任状を偽造されるリスクを考えると、「本人以外の人には絶対にみられない」とは言い切れません。
3-2.意識せずに委任状を書いてしまうパターン
次に、本人が意識しないまま委任状を作成してしまうパターンがあります。
たとえばスマホ端末を分割払いで購入する際には、携帯会社から「個人信用情報の取扱に関する同意書」の提出を求められるものです。この書類を提出すると、携帯会社に信用情報開示請求する権利を認めたことになります。
情報照会の結果、事故情報や異動情報が登録されていたら、分割払いの審査に通してもらえません。
また企業が人材を採用するときにも個人信用情報を確認しようとするケースがあります。
面接の際などに「信用情報開示に関する同意書」といった書面に署名押印させ、企業が代理人として情報照会するのです。
本来なら一般企業には信用情報を照会する権限はないので、採用の際に信用情報を閲覧される可能性はありません。勝手にみられたら違法行為です。
しかし自分で委任状を書いてしまったのですから、情報照会されても文句をいえません。
信用情報開示に関する何らかの「同意書」や「委任状」への署名押印を求められたら、本当にサインしてもよい書類かどうかを慎重に検討すべきといえるでしょう。
4.第三者に信用情報を勝手にみられないようにする方法
同居の家族や企業などの第三者に信用情報を勝手にみられないようにするには、どうすればよいのでしょうか?
4-1.印鑑登録証明書の発行停止
同居している家族がいると、勝手に委任状を作成して印鑑登録証明書を持ち出し、役所で印鑑登録証明書の発行を申請されてしまう可能性があります。役所は書類がそろっていれば証明書を発行してしまうでしょう。
このリスクをなくすには、役所へ印鑑登録証明書発行の停止措置をとるようお勧めします。事前に本人から停止措置依頼がでていたら、役所は第三者へ印鑑登録証明書を発行しません。
電話でも発行停止措置を受け付けてもらえる役所が多いので、まずは一度自治体へ電話してみましょう。
4-2.印鑑登録カードを厳重に保管
一度印鑑登録証明書発行停止措置をとると、解除するのに手間がかかります。
もしも停止までしたくないなら、印鑑登録カードを厳重に保管しましょう。印鑑証明書を申請するには必ず印鑑登録カードが必要だからです。
自分だけしかアクセスできない場所に保管しておけば、家族は印鑑登録カードを役所に持参できず、知らない間に書類申請させる危険を避けられるでしょう。
4-3.委任状、同意書への署名押印をしない
家族や企業などの第三者を含め、「委任状」や「同意書」には簡単に署名押印してはなりません。「信用情報の取得に同意します」という文面が含まれていると、有効な委任状として相手に信用情報機関へ情報照会する権限が付与されてしまうからです。
また「白紙委任状」にも要注意。白紙委任状とは、委任者が署名押印する際には委任事項が空欄になっており、後に受任者が内容を書き足して自由に使える委任状です。
家族はもちろんのこと、悪質業者が白紙委任状を書かせてさまざまな悪事に用いるケースも少なくありません。勝手に借金をされたり連帯保証人にさせられたりする可能性もあります。
委任事項が白紙の委任状には絶対に署名押印しないようにしましょう。
5.弁護士や司法書士へ信用情報開示請求を依頼できる
5-1.弁護士に信用情報開示請求を依頼するメリット
信用情報の開示請求を行いたいとき、やり方がわからない方や手間をかけたくない方もおられます。そういった場合には、自ら信頼できる第三者へ信用情報開示請求を依頼しましょう。
たとえば弁護士に信用情報開示請求を依頼して書類を取り寄せれば、自分で対応する必要はありません。取り寄せた書類の内容検討なども任せられるので、安心です。
5-2.事故情報の抹消を依頼できるケースもある
信用情報に事故情報(延滞情報や債務整理情報などのネガティブな情報)が登録されている場合、そのまま放っておくといつまでもローンやクレジットカードを利用できないままになってしまいます。現代社会でクレジットカードを使えないのは大変不便でしょう。
そんなときでも一定の要件を満たせば事故情報を消せる可能性があります。たとえば以下のような場合、事故情報を消してローンやクレジットカードを使える状態に戻せる可能性があるので、確認してみてください。
- 借金を長期間返済しておらず時効が成立している可能性がある
- 時効援用したら事故情報が登録され、クレジットやローンを利用できなくなった
- 2008年頃以前からキャッシングや消費者金融を利用している
- 平成16年(アイフルの場合には平成23年)以前からクレジットカードやキャッシングを利用している
5-3.事故情報の抹消請求は弁護士へ相談を!
事故情報の抹消請求を行う際には、ご自身が対応されるより弁護士に依頼した方がスムーズに進むものです。貸金業者との交渉なども弁護士が行うので、ご自身はほとんど何の対応もする必要がありません。
また弁護士からご家族やその他の第三者へ信用情報の内容が漏れる可能性もないのでご心配は不要です。弁護士には守秘義務がありますし、個人情報保護法も適用されるので適切な方法で情報管理いたします。
個人信用情報の内容が気になっている方、クレジットカードやローン審査に通らないので事故情報を消したい方がおられましたら、一度お気軽にご相談ください。