
クレジットカードやローンなどを2~3ヶ月程度延滞すると、信用情報に事故情報(延滞情報)が登録されてしまいます。
そうなると、クレジットカードの発行も受けられず、住宅ローンや車のローンなども一切利用できません。いわゆる「ブラックリスト」の状態です。
ただ結婚や離婚、養子縁組などによって「名字」が変わったら、貸金業者によって旧姓時代の事故情報を参照されなくなるのでしょうか?そうであれば、ローンやクレジットカードを利用できる可能性があります。
今回は旧姓で延滞してブラックリスト状態になった方が結婚や離婚などによって名字が変わるとクレジットカードやローンを利用できるのか、解説します。
過去、旧姓時代にカードやローンを長期延滞したり債務整理したりした経験のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.貸金業者が信用情報を参照する方法
結婚や離婚などによって名字が変わった場合でも、昔の個人情報を調べられる可能性があるのでしょうか?
まずはカード会社や消費者金融などの貸金業者が信用情報を照会するとき、どのようにして「個人を特定」しているのか、みてみましょう。
貸金業者や銀行などの金融機関が信用情報を参照する際には一般的に「氏名」と「生年月日」によって特定します。
このときの「氏名」は基本的に「現在の氏名」です。旧姓時代の情報を自動的に追いかけるわけではありません。
そこで旧姓時代にカード返済を長期延滞して事故情報が登録されても、結婚などによって姓が変わると事故情報を参照されない「可能性」はあるといえます。
2.姓が変わると信用情報はどうなる?
次に、姓が変わったらその人の信用情報がどうなるのか、みてみましょう。
基本的に名前が変わると信用情報は新しくなります。以前の旧姓のデータがそのまま引き継がれるわけではありません。
新しい姓で1度もクレジットやカードを使ったことがなければ、信用情報にはまったく何の履歴もない「ホワイト」の状態になると考えましょう。
旧姓での信用情報に事故情報が登録されていたとしても、新しい姓で延滞していなければカード会社に知られない可能性があるといえます。
3.法改正前は、旧姓の情報を参照されなかった
旧姓時代の事故情報は新しい姓の信用情報に当然に引き継がれるわけではありません。
そこでかつては結婚などによって名字が変わると、多くのケースにおいてカードやローンの審査に通っていました。
それは「信用情報の管理方法」が現在と昔で違ったためです。
貸金業法の改正前は、各都道府県が「信用情報センター」を個別に設置して信用情報を管理していました。
都道府県ごとに設置された各センターは一応ネットワークによって連結されてはいましたが、現在ほどシステムが強固ではなく統一されていたわけでもありません。
結婚などによって姓が変わると情報を追いかけられず、ローンやカードの審査に通してしまうケースが多数発生していたのです。
現在の信用情報期間の状況
現在は貸金業法が改正されて、信用情報機関が以下の3つに統合されています。
- CIC
カード会社や信販会社が多数加盟している信用情報機関です。
- JICC
消費者金融会社が主に加盟している信用情報機関です。
- KSC
銀行などの金融機関が主に加盟している信用情報機関です。
これら3つは「CRIN」というシステムによってそれぞれが把握している個人情報を共有しています。CICとJICCは「FINE」というシステムを用いてさらに密接な関係を保ち、強固に連携している状態です。
このように信用情報機関が全国的に統合されインフラ整備されたことにより、個人の延滞情報や債務整理に関する情報などをより正確に把握できる状況に変わったといえるでしょう。
貸金業法が改正されたのは2010年。それ以前とそれ以後では、信用情報管理方法に大きな変革があったといえます。
過去に「名字が変わったら旧姓の延滞がバレなかった」という方がいたとしても、同じ方法が現在でも通用するとは限りません。
4.カード会社が旧姓情報を把握する方法
旧姓で延滞した方がクレジットカード会社に申込みをしたら、カード会社はどのようにして旧姓の事故情報を把握するのでしょうか?
具体的な方法をみてみましょう。
4-1.本人に旧姓を申告させる
クレジットカードやローンの申込みをするときには「旧姓」を書き込む欄が設けられているケースが多数です。
こうしたカード会社は、旧姓でも信用情報を照会している可能性が高いと考えましょう。
姓が変わっても旧姓で検索されたら過去の事故情報を知られてしまい、結局はカードの審査に落とされるでしょう。
4-2.運転免許証番号で特定
クレジットカードの申込みをするときには、何らかの本人確認書類が必要です。
多くの方が運転免許証を利用するでしょう。
結婚や離婚、養子縁組などをしても通常運転免許証の番号は変わりません。
免許証番号を照会されると、旧姓時代の事故情報を知られてしまう可能性が高くなります。
4-3.住所、下の名前で特定
信用情報の照会をするとき、一般的には氏名と生年月日を用いますがそれ以外の情報を参照するケースも少なくありません。たとえば現住所や旧住所を調べるケースもあります。
また名字が変わっても通常は下の名前までは変わりません。生年月日、住所、下の名前が一致して旧姓時代の延滞を知られてしまう可能性もあります。
4-4.大手の金融業者の場合には見逃される可能性は低くなる
特に大手の消費者金融やカード会社、銀行などの場合、信用情報を照会するためのシステムが充実しています。各種の照合を自動的に行うので、新しい姓で申し込んでも情報を特定されて過去の事故情報が判明する可能性が高いと考えましょう。
4-5.申込書に虚偽を書いてはならない
このように、カード会社は本人が申告した旧姓や運転免許証番号などによって旧姓時代の延滞情報、債務整理情報を参照しているケースが多いと考えられます。
そのように聞くと申込書に「旧姓を書かなければ良いのでは?」「運転免許証番号に虚偽を書けば良いのでは?」などと考える方もおられるかもしれません。
しかし申込書に虚偽を書いてはなりません。
そのようなことをしてカードを発行させて利用すると、カード会社をだますことになってしまいます。場合によっては「詐欺」となってしまう可能性もあるでしょう。刑事事件にまではならないとしても、そのリスクがあることには注意が必要です。
また虚偽が判明したらカードを強制解約されて利用禁止リストに登録され、そのカード会社では一生カードを利用できなくなる可能性が高くなるでしょう。
虚偽申告には高いリスクがつきまとうので、絶対にしないでください。
5.旧姓の事故情報が見逃されるパターン
旧姓で延滞や債務整理をしたことがあって新しい姓でカードを申し込んだとき、過去の事故情報が見逃されて審査に通るケースも中にはあります。
比較的多くみられるのは、カード会社や消費者金融会社の担当者の審査が甘かった場合。
たとえば中小の金融業者などの場合、機械的なシステムを使わず審査担当者が手動で信用情報の照会を行っているケースも少なくありません。
担当者がずさんであれば申請された氏名と生年月日だけを参照し「事故情報なし」と判断される可能性もあります。
また「申込件数が多くて忙しかった」「システムの調子が狂っていた」などの事情により、旧姓時代の事故情報を参照されないケースもあるでしょう。
このように、現代であってもたまには旧姓時代の事故情報を見逃されてカード発行される可能性がないとはいえません。
ただし基本的には「旧姓時代の借入や延滞も発覚する可能性が高い」といえるので、過度に期待をかけるべきではないと考えます。
6.いったんカード審査に通ると途中でバレる可能性は低い?
旧姓時代に事故情報が登録されても、結婚や離婚などで姓が変わると運良くカードやローンに通るケースは存在します。たとえば2010年の貸金業法改正前にカードを作った場合や上記のように審査が甘かったケースなど。
このようにいったんカードが発行されてしまったら、その後の与信審査で旧姓における事故情報が発覚する可能性があるのでしょうか?
与信審査とは、カード発行後もカード会社が更新の際などに行う本人の信用情報調査です。
いったんカードを発行しても、その後延滞や債務整理などをしていないか、ときどきチェックして問題があれば利用停止などの手続をとるために実施します。
旧姓で事故情報がある方の場合でも、与信審査によってカードを止められる可能性は低いと考えられます。カード会社の担当者も、与信審査をするときにまで旧姓時代の氏名や運転免許証まで検索するケースは少ないからです。
旧姓時代に事故情報が登録されていったんブラックリスト状態になっても、運良くカードを発行してもらえたら、その後は与信審査に引っかかっていきなりカードを利用停止される可能性は低いと考えて良いでしょう。ただし絶対ではありません。
7.同じカード会社ではハードルがさらに高くなる
旧姓時代に延滞や債務整理などをして事故情報が登録されている場合、新たにカードを申し込むなら同じカード会社は避けましょう。
カード会社では、CICなどの信用情報機関の信用情報とは別に、独自に自社内の「ブラックリスト情報」を集積しているケースが多いためです。こうした社内独自のブラックリストを「社内ブラック」などともよびます。
社内ブラックでは、CICなどの信用情報以上に詳細かつ丁寧に問題となるユーザー情報を管理しているケースが多数です。
たとえCICなどの信用情報では見逃されることがあっても、自社内のブラックリスト情報では旧姓まできっちりチェックされて、審査に落とされる可能性が高くなるでしょう。
過去に延滞や債務整理をして迷惑をかけたことのある会社には、カードやローン、キャッシングなどの申請をしないのが無難です。
8.事故情報は5年で消える
旧姓で延滞や債務整理をして事故情報が登録されると、姓が変わっても発覚する可能性が高いので、基本的にはローンやクレジットカードを利用しがたいと考えましょう。
しかし一生ブラックリスト状態が続くわけではありません。事故情報は時間の経過によって消去されるので、そのときには借入ができるようになります。
延滞した場合には、延滞状態の解消後約5年で事故情報を消してもらえます。
債務整理をした場合にも、JICCやCICなら約5年で事故情報を消去する運用となっています。KSCでは、自己破産と個人再生の情報が約10年間残りますが、任意整理なら5年程度で事故情報を消してもらえます。
このように、いったん事故情報が登録されてもおおむね5年程度が経過すればまたローンやクレジットカードを利用できるケースが多いので、絶望する必要はありません。
9.借金を返せないなら弁護士へ相談を
債務整理をするとおおむね5年で事故情報が消えますが、借金を延滞している場合には「延滞状態を解消」しない限り事故情報が残ってしまいます。そのままではずっとローンやカードを使えないままになる可能性が高いでしょう。
もしも借金やカードの残債をどうしても払えないなら、債務整理によって解決するようお勧めします。任意整理や個人再生などの債務整理をすれば、借金を減額してもらえるのでこれまでより支払が楽になりますし、自己破産すれば一切の支払いが不要になります。
それだけではなく、5~10年が経過すると事故情報も消えるので、ローンやカードを利用できる状態に戻ります。
借金を返せずに放置していてもずっとブラックリスト状態のままになってしまうので、その状態から脱却するためにも早めに債務整理をするのが得策です。
旧姓で借金を延滞している方は、弁護士までご相談を
当事務所では、間違って登録された信用情報の削除請求や債務整理に積極的に取り組んでいます。
借入時期が古い方は過払い金請求によって払いすぎた利息を取り戻せる可能性もあります。
全国からご相談をお受けしていますので、旧姓時代など、昔借りた借金を返せない方はお早めに弁護士までご相談ください。