
家賃を滞納し続けていたら、信用情報に事故情報が登録されてしまうのでしょうか?
事故情報が登録されて信用情報に傷がつくと、ローンやクレジットカードを一切使えない不便な状態になってしまいます。
実は家賃を滞納しても多くのケースでは信用情報に影響しませんが、一部、信用情報を傷つけてしまうケースもあるので注意しましょう。
今回は家賃を滞納したときの信用情報に対する影響について解説します。
1.家賃滞納しても信用情報に影響しない
家賃を滞納すると、信用情報に影響は及ぶのでしょうか?
多くのケースでは、家賃滞納と信用情報には関係がありません。長期にわたって家賃を払わなくても基本的に信用情報には影響しないと考えましょう。
1-1.信用情報とは
信用情報とは、個人のローンやクレジットカードに関する利用や支払、延滞などの情報です。
消費者金融会社やクレジットカード会社、銀行などの金融機関は審査の際に本人の信用情報を参照します。信用情報に延滞情報が登録されていると「返済にリスクのある人物」と思われるので審査に通してもらえません。
そこで事故情報が登録されるとローンやクレジットカードを利用できなくなってしまうのです。いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれる状態です。
1-2.信用情報に事故情報が登録されるケースとは
消費者金融やクレジットカード、住宅ローンなどを延滞し続けると、信用情報に「事故情報」というネガティブな情報が登録されてしまいます。すると、一切のローンやクレジットカードを利用できないばかりか、携帯電話の端末代分割払いや連帯保証人になることもできなくなってしまいます。
1-3.家賃滞納と信用情報の関係
借金返済の滞納によって信用情報に事故情報が登録されるのは、貸付業者が信用情報機関に加盟しているからです。
信用情報機関には以下の3種類があります。
- JICC
- CIC
- KSC
消費者金融会社やカード会社、銀行等は利用者が長期延滞すると、加盟している信用情報機関へ延滞情報を通知するので、その時点で信用情報に事故情報が登録される仕組みです。
ただ、家賃の債権者である不動産会社や個人の大家さんは貸金業者ではありません。信用情報機関に加盟していませんし、信用情報の参照もできません。
そこで家賃を滞納しても不動産会社や大家さんから信用情報機関へ通知されることはないのが原則です。どれだけ長く家賃を滞納し続けて督促を受けていても、基本的に信用情報に事故情報が登録される可能性は低いと考えましょう。
2.信用情報機関に加盟している事業者と加盟していない事業者の違い
そもそも信用情報機関に加盟しているのはどういった事業者なのでしょうか?
2-1.加盟している業者
信用情報機関に加盟しているのは以下のような事業者です。
- 消費者金融会社
- カード会社
- 信販会社
- 携帯電話会社系の信販会社
- 車のディーラー系の信販会社
- 保証会社
- 銀行
- 信用金庫
- 農協
- 信用組合
- その他の金融機関
- 日本政策金融公庫
- 日本学生支援機構
上記のような借入を起こして延滞すると、信用情報に事故情報が登録される可能性があります。
一般的な「借金」以外にも、保証会社に保証してもらった場合、奨学金を延滞した場合、公庫からの借入を延滞した場合、連帯保証債務を延滞した場合、携帯電話端末代を延滞した場合などにも事故情報が登録されるので、注意しましょう。
2-2.信用情報機関に加盟していない業者や個人
以下のような人や業者、団体は信用情報機関に加盟していません。
- 不動産会社
- 生命保険会社
- NHK
- 病院
- 電力会社、ガス会社
- 自治体
- 個人
家賃や生命保険の保険料、NHKの受信料、治療費、水道光熱費、保育料や学費などを滞納しても、信用情報に傷がつく心配は基本的にありません。
3.家賃滞納して信用情報に傷がつくケースとは?
家賃を滞納しても信用情報に事故情報は登録されないのが原則ですが、ケースによっては長期にわたって家賃を支払わないと事故情報が登録されてブラックリスト状態になる可能性があります。
3-1.家賃をクレジットカードで払っている
賃貸借契約をするとき、家賃の支払いをクレジットカードで行うケースがあります。
その場合、家賃を滞納するとクレジットカードの延滞状態になってしまうので、信用情報機関へ通知されて事故情報が登録される可能性が高くなります。
3-2.信販系の保証会社が入っている
最近では賃貸借契約をするときに保証会社を利用する方が増えています。
すべての保証会社ではありませんが、「信販会社系」の保証会社を利用するときには信用情報との関係で注意してください。信販会社系の保証会社は信用情報機関に加盟しているので、家賃を滞納して保証会社が代位弁済すると事故情報が登録されてしまいます。
このように、クレジットカードを使って家賃の支払をしたり信販会社系の家賃保証会社を使ったりすると、家賃を滞納しただけで「ブラックリスト状態」になってしまう可能性があります。
くれぐれも延滞しないようにしましょう。
4.家賃を滞納して放置していたらどうなるか、流れを解説
クレジットカードや保証会社を利用していなければ、家賃を延滞しても基本的に信用情報に傷がつく心配はありません。
しかし家賃を払わず放置していると、以下のようなリスクが発生します。不払いが続くとどうなるのか、流れをみていきましょう。
4-1.大家や不動産会社から督促される
まずは大家や不動産会社から不払い分の督促をされます。
始めは電話がかかってきたり手紙が届いたりする程度ですが、放っておくと自宅を訪ねてこられたり内容証明郵便で督促状が送られてきたりするでしょう。
「このまま支払わないなら、契約を解除して退去してもらいます」と通告されてしまうケースも少なくありません。
ただし家賃滞納によって契約の解除が認められるのは、滞納分が3ヶ月程度以上に達した場合です。1、2ヶ月の滞納であれば、いきなり追い出される心配はありません。
4-2.契約を解除される
一般的に入居者が家賃を3ヶ月分以上滞納すると、大家は賃貸借契約を解除して入居者を追い出せる状態になります。
そこで家賃不払いが3ヶ月以上続くと、大家や不動産会社から内容証明郵便で、不払い家賃の一括請求と賃貸借契約の解除通知書が送られてくる可能性が高いと考えましょう。
この時点できちんと払えば許してもらえる可能性もありますが、放っておくとさらに状況が悪化していきます。
家に住み続けたいなら、本来は契約解除の書類が届く前に対応すべきです。万一間に合わずに解除通知書が届いてしまった場合にはすぐに大家や不動産会社へ連絡をいれて、滞納分を支払うよう申し入れましょう。
4-3.訴訟を起こされる
賃貸借契約の解除通知書を送られても放置していたら、大家から滞納家賃の支払いと物件の明け渡しを求める訴訟を起こされる可能性が濃厚となります。大家としても、家賃を払わない賃借人をいつまでも入れていると損失にしかならないためです。
訴訟を起こされたとき、賃料不払いに正当な理由がなかったら裁判所から明け渡し命令が出てしまいます。この場合、任意に引っ越しをして明け渡しても不払い賃料が免除されるわけではないので注意が必要です。不払い分は、引っ越し後も支払わねばなりません。
さらに不払い賃料には「遅延損害金」も加算されるので、不払い期間が長くなればなるほど負債額が増大してしまいます。遅延損害金の割合は、契約書で定められた数値です。約定によって定められる場合には「年率14.6%」とされているケースが多いでしょう。
契約書に遅延損害金についての定めがない場合、割合は賃貸借契約の契約時期によって異なります。
「2020年3月31日までの契約」によるものであれば年率5%または6%となり、「2020年4月1日以降の契約」によるものであれば年率3%となります。2020年4月1日から利率が変わるのは、このときに法定利率を定める新民法が施行されたためです。
4-4.強制執行で追い出される
裁判で物件の明け渡し命令が出たら、法的には物件に居住する権利がなくなるので早めに退去すべきです。
しかし引っ越し代が不足しているなどの事情で退去できない場合もあるでしょう。
その場合、大家側から「強制執行」を申し立てられて、強制的に物件から追い出されてしまいます。
ある日突然裁判所の執行官や大家が自宅にやってきて、荷物を運び出されて外に連れ出されてしまうのです。こうなったら家に住み続けることはできません。
4-5.財産や給料を差し押さえられる
家を追い出されても、まだ終わりではありません。
未払い家賃と遅延損害金を払っていないので、大家から支払を請求されます。
裁判で支払い命令が出ているので、任意に支払わねば「差し押さえ」をされる可能性が高いと考えましょう。
差し押さえの対象になるのは、以下のような財産です。
- 預金
- 保険
- 車
- 社内積立
- 給料、ボーナス
- 退職金
特に「給料」を差し押さえると、毎月手取りの4分の1程度の金額または33万円を超える部分をとられてしまうので、生活が厳しくなる可能性が濃厚です。そうなったら、一刻も早い対応が必要です。
5.ブラックリスト状態になったら新規の賃貸に通らない?
家を追い出されたら、新たに入居する家を探さねばなりません。このとき、以前に家賃滞納して追い出されたとしても別物件の審査に通るのでしょうか?
特に以前の契約で信販系の保証会社を利用して信用情報に事故情報が登録されていても、賃貸借の新規契約ができるのか、みてみましょう。
実は信用情報に事故情報が登録されていわゆるブラックリスト状態になっていても、新規の賃貸借契約はできるケースが多数です。信販系の保証会社が入る場合やクレジットカードで家賃を支払うケース以外では、大家や不動産会社は信用情報を参照しないからです。
信用情報に延滞情報が登録されていても、審査の際にみられないので、年収や勤務先などの条件を満たしていれば審査に通る可能性が充分にあります。
また不動産会社の間で「家賃不払い情報」を共有するシステムなどもありません。
家賃滞納して強制退去させられても、基本的には別の物件であれば入居審査に通る可能性があるので安心しましょう。
6.家賃を払えないときの対処方法
もしも家賃を払えない状態になったら、どうすれば良いのでしょうか?
確かに家賃を支払えなくても信用情報に影響しないケースが多いのですが、放っておくと家を追い出されてしまいます。また家賃を払えないような状況になっていたら、他にも借金がかさんでいるケースが多いでしょうし光熱費や通信費なども滞納してしまうでしょう。
放っておくとライフラインを断たれてしまうおそれも高まります。
この場合、債務整理をして解決しましょう。
6-1.債務整理とは
債務整理とは、債権者と交渉したり裁判所へ申立をしたりして、借金や家賃などの負債を減免してもらう手続きです。
任意整理では直接債権者と交渉して負債の利息部分をカットしてもらいます。
個人再生では裁判所に申立をして負債を大きく減額してもらいます。
自己破産をすると、滞納家賃を含めた負債を全額免除してもらえます。
支払ができなくても債務整理をすれば滞納家賃や遅延損害金の支払に追われる生活から解放されるので、大きなメリットを得られるでしょう。
6-2.債務整理と信用情報の関係
債務整理をすると、信用情報に事故情報が登録されます。
任意整理の場合には約5年、個人再生や自己破産をすると約10年間事故情報が登録され続ける可能性があります。そこで債務整理を嫌い、カードローンなどを利用してしのごうとする方が少なくありません。
しかし家賃を長期滞納し続けてカードローンに頼っても、いずれはカードローンも支払えずに滞納してしまうでしょう。そうなったら結局は信用情報に事故情報が登録されてブラックリスト状態になります。延滞による事故情報は、延滞状態を解消しないと消してもらえませんし、延滞解消後も5年間は登録され続けてしまいます。
つまり債務整理を避けて他の借金に頼っても、結局は信用情報に傷をつけてしまうリスクが高いといえ、意味がありません。
一方で債務整理をしたら、その時点から5~10年間で事故情報を消してもらえます。
そうであれば、当初から債務整理を選択して借金問題を解決する方が、信用情報の観点からもメリットが大きいといえるでしょう。
家賃を払えずお困りの方はご相談ください
当事務所では信用情報の開示や間違った情報の訂正、債務整理に非常に力を入れています。
信用情報の情報を確認したい方、間違って事故情報が登録されてしまった方、家賃や借金を払えない方のトラブルを解決しております。
家賃を払えなくて困っている方がおられましたらお気軽にご相談ください。