
電気やガス、水道代などの公共料金や住民税などの税金を滞納すると、信用情報に傷がついてしまうのでしょうか?
実はこういった料金を滞納しても、信用情報には基本的に影響しません。
ただし一定の条件下では信用情報に傷をつけてしまう可能性がありますし、公共料金や税金を滞納すると信用情報以外のリスクも発生します。
今回は公共料金や税金の滞納リスクや信用情報への影響について解説します。経済的な事情でさまざまな料金の支払が難しくなっている方はぜひ、参考にしてみてください。
1.公共料金や税金滞納は信用情報に影響しない
家計の状況が苦しくなると、電気やガス、水道などの公共料金や住民税、固定資産税などの税金を滞納してしまうものです。
基本的にはこういった支払を延滞しても、信用情報には影響しません。
1-1.信用情報とは
信用情報とは、個人のローンやカードに関する利用や返済、申込みなどの記録です。貸金業者や金融機関へのローンやカードの申込み情報、返済状況などが登録されています。
信用情報に「延滞情報」などの事故情報が登録されると、貸金業者や金融機関から貸付やクレジットカードの発行を受けられなくなります。こういった金融業者は貸付の可否を判断するとき、申込者の信用情報を確認して「審査」を実施するためです。
クレジットカードやキャッシング、住宅ローンや車のローンなどの返済を滞納すると、信用情報に事故情報が登録されてしまいます。
そうなったら審査に通らなくなるため、一切のローンやカードを利用できません。日常生活に大変な支障が及ぶでしょう。
このように信用情報に傷がついてローンやカードを利用できない状態を、一般に「ブラックリスト」や「金融ブラック」「ブラック状態」などといいます。
1-2.公共料金、税金滞納で信用情報に傷がつかない理由
なぜ公共料金や税金を滞納しても信用情報に傷がつかないのでしょうか?
それは、公共料金や税金の債権者が「信用情報機関」に加盟していないからです。
信用情報機関は信用情報を管理する専門機関。すべての貸金業者や金融機関はどこかの信用情報機関に加盟しています。
そしてカードやローンの滞納によって事故情報が登録されてしまうのは、カード会社や銀行などの金融業者が信用情報機関へ延滞情報を伝えてしまうからです。
利用者が返済を滞納したら、金融業者は加盟している信用情報機関へ延滞情報を伝え、事故情報を登録してもらいます。事故情報はすべての信用情報機関で共有されるため、滞納した人の信用情報に傷がついたらローンやカードを利用できなくなってしまうのです。
一方で、公共料金の債権者である「電気会社、ガス会社、自治体」は信用情報機関に加盟していません。税金の債権者である「国」や「自治体」についても同様です。
支払いを滞納しても信用情報機関に通知されることはなく、信用情報には影響がありません。
そもそも電気会社やガス会社、国や自治体は信用情報機関に加盟している貸金業者とは全く異なる機関なのです。
以上のような事情から、公共料金や税金を滞納しても信用情報には影響しません。
2.信用情報に傷がついてしまう場合
しかしときには例外的に、公共料金や税金の滞納によって信用情報に傷がついてしまうケースがあるので、注意しなければなりません。
それは、電気ガス水道代や税金を「クレジットカード」を使って払う場合です。
たとえば水道光熱費をクレジットカードで払っている方が、残高不足でカードの引き落としができなかったとしましょう。その場合、カード会社が信用情報機関へ延滞情報を通知してしまう可能性があります。2ヶ月分以上カードの支払を延滞すると、事故情報が登録されてブラック状態になります。
最近では、税金もクレジットカードで払えるケースが増えています。いったんクレジットで決済しておきながら、支払い時に残高不足で引き落としができなかったら、やはりクレジット会社が信用情報機関へ通知してしまいます。
このように、公共料金や税金自身の滞納によって信用情報に傷がつくことはありませんが、クレジットカードの支払ができないと結局は事故情報が登録されてしまうおそれがあります。
クレジットカードを使って各種の支払をする場合には、くれぐれも残高不足で支払不能にならないよう、注意しましょう。
なおクレジットカードの支払が遅れても、1回だけであれば事故情報は登録されないのが通常です。2ヶ月以上長期延滞した場合に事故情報が登録される扱いとなっているので、参考にしてみてください。
3.信用情報に影響しない支払い
公共料金や税金以外にも、滞納によって信用情報に影響しない支払がいくつかあります。
一覧で示すので、みてみましょう。
- NHK受信料
NHKは貸金業者ではなく、信用情報機関へ加盟していません。NHKの料金を滞納しても事故情報は登録されないと考えましょう。ただし支払方法をクレジットカード払いにしている場合には、公共料金と同様にカード利用料の延滞によって情報登録される可能性があります。
- 医療費
病院は信用情報機関へ加盟していないので、医療費を支払わなくても事故情報は登録されません。しかし自費診療などでクレジットカード払いを選択したときには、きちんと引き落としができないと事故情報が登録される可能性があります。
- 奨学金
奨学金の貸付元である各種機関は、通常貸金業者ではありません。たとえば日本学生支援機構の奨学金を滞納しても、信用情報に影響はありません。
- 家賃
不動産会社や大家は基本的に貸金業者ではありませんので、家賃を滞納しても事故情報は登録されません。
ただし家賃をクレジットカード払いにしている場合や信販会社を通じて家賃を払う契約になっている場合には要注意です。こういったケースで家賃を滞納すると信用情報に傷がつくと考えましょう。信販系の家賃保証会社に代位弁済してもらったケースでも要注意です。
- 生命保険料、損害保険料
生命保険会社や損害保険会社は貸金業者ではないので信用情報機関へ加盟していません。保険料を滞納しても信用情報に対する影響はないと考えましょう。
- 携帯電話代金、インターネット通信料
電話会社や通信会社は信用情報機関へ加盟していないので、携帯電話代金やインターネット通信料を滞納しても、信用情報に影響しないのが基本です。
ただし携帯電話端末代を分割払いにしているケースでは注意しなければなりません。端末代を分割払いするときには、信販会社を利用するからです。
携帯電話代金と同時に端末代の分割払いも滞納すると、信用情報機関に事故情報が登録されてしまうと考えましょう。
- 罰金、反則金
道路交通法違反やその他の法令違反で反則金や罰金を科された場合、払わなくても事故情報は登録されません。
- 電気ガス水道などの公共料金、税金
電気ガス水道などの公共料金と税金については、すでに説明したとおりです。
4.公共料金を延滞するリスク
公共料金を滞納しても信用情報には事故情報が登録されませんが、滞納すると別のリスクが発生します。
それは、電気やガスなどのライフラインを止められてしまうことです。
こうした生活に必須のサービスは、滞納したからといってすぐに止められるわけではありません。しかし何度も督促が来ているのに無視続けて長期間が経過すると、最終的には利用を停止されます。電気やガス、水道などを止められると、生活が困難となってしまうでしょう。
引っ越しをしても滞納料金が免除されるわけではありません。引っ越し先に請求書が届いて督促されるケースもありますし、裁判を予告されたり引っ越し先での新たな契約が難しくなってしまったりする可能性もあります。
5.税金を滞納するリスク
税金を滞納すると、国や自治体から督促が来ます。
放置していると、「滞納処分」として財産や給料などを差し押さえられてしまう可能性があるので注意しましょう。家や車、その他の価値のある資産が差し押さえられて「公売」にかけられ、強制的に売却されてしまうのです。
税金の滞納処分には訴訟は不要なので、裁判なしにいきなり差し押さえられてしまいます。税金は滞納しないよう、くれぐれも注意してください。
また税金を延滞するとその期間中延滞税が発生し、税額がどんどん膨らんでしまうリスクもあります。
7.公共料金や税金を払えない場合の対処方法
公共料金や税金を払えなくなったら、どうすればよいのでしょうか?
7-1.借金があるなら債務整理をする
もしも公共料金などの滞納以外に借金があるなら、早めに債務整理をしましょう。
実際、生活に最低限必要な公共料金を払えない状況に陥っている方は、すでに高額な借金を抱えているケースが多々あります。その場合、借金を整理すれば家計の状況が改善され、公共料金も払えるようになるでしょう。
税金を滞納している場合にも、税金以外の借金問題を整理できればきちんと滞納税の支払に向けた対応を進められるケースが多数です。
債務整理には任意整理、個人再生、自己破産の3種類があり、状況に応じてとるべき手段が異なってきます。
自分1人で手続きを選択して対応するのは難しいでしょうから、早い段階で弁護士に相談してみてください。
7-2.債務整理と公共料金の関係
債務整理すると、公共料金はどうなるのでしょうか?免除されるのかどうかなど、みてみましょう。
任意整理の場合には影響しない
債務整理をした場合の公共料金の取扱いは、利用する債務整理の方法によって異なります。
まず任意整理の場合、基本的に何の影響もないと考えましょう。
電気代やガス代、水道代などについて減額交渉を求めることは通常ありません。
そのまま支払い義務が残るので、任意整理中や任意整理後にきちんと滞納分を支払い、電気やガス、水道の利用を継続させてもらいましょう。
個人再生や自己破産の場合
個人再生や自己破産の場合には、公共料金も減免の対象になります。
自己破産の場合
自己破産をすると、滞納していた電気代やガス代は全額免除してもらえます。「破産すると電気ガスを止められるのでは?」と心配する人もいますが、そのようなことはありません。きちんと自己破産をして支払い義務が法的に免除されれば電気やガスを止められませんし、新規の契約もできます。
ただし下水道料金だけは自己破産をしても免除されないので、支払を継続しなければなりません。
個人再生の場合
個人再生の場合、滞納している公共料金も減額の対象になる可能性があります。ただし直近6ヶ月分の滞納分は減額の対象にならないので注意しましょう。そのまま支払をしなければなりません。また個人再生で公共料金を減額してもらっても、電気ガス水道を止められる心配は要りません。
公共料金を払えない状態になっているなら早めに債務整理をしましょう。
7-3.債務整理と税金の関係
債務整理をすると、税金に対してはどういった影響が及ぶのでしょうか?
実は税金は債務整理の対象になりません。
任意整理で減額してもらうこともできませんし、個人再生や自己破産をしても減免されません。基本的には全額支払う必要があります。
とはいえ税金以外にも借金を抱えているなら、債務整理は非常に有効な解決方法となるでしょう。任意整理や個人再生でカードローンなどの支払いを減額すれば、浮いたお金で税金を払える方も多いはずです。
自己破産によって借金が全額免除されれば、税金を払いやすくなるでしょう。
以上のほか、未払い家賃やNHK料金、奨学金なども自己破産や個人再生によって減免してもらえます。
各種支払に困っているなら、一刻も早く債務整理をして状況を改善していきましょう。
7-4.生活保護を受ける方法も
借金もしていないのに公共料金や税金を払えない場合、生活保護を検討するようお勧めします。
他の支払もないのに公共料金も払えない場合、働いて収入を得るのが難しい状況と考えられるからです。自力で生活できず親族からの援助なども期待できない状況であれば、国から保護をもらって生活を維持しましょう。
生活保護を受けていれば税金の滞納処分も猶予してもらえるので、差押を受ける心配からもいったん解放されます。また、健康保険料などの支払いも不要となり新たな税金も基本的にはかからなくなるので、最低限の生活が守られやすくなります。
税金を滞納していても生活保護の申請は受け付けてもらえるので、安心して福祉事務所に相談してみてください。
なおすでに滞納している税金に関しては、早期に生活保護から脱却した場合には改めて督促が来る可能性があります。生活保護になったからといって税金が完全に免除されるわけではないので、注意しましょう。
8.信用情報や借金に関するご相談は弁護士へ
公共料金や税金滞納、カードローンなどの滞納による信用情報への影響が心配な方、支払ができずに困っている方は、1度弁護士までご相談ください。
当事務所では、間違って登録された事故情報の消去や各種債務整理手続きに積極的に取り組んでいます。
公共料金も払えないような生活を我慢し続ける必要はありません。税金を滞納し続けると突然差押を受けるリスクもありますし、借金を滞納したら、結局は信用情報に傷がついてしまいます。
状況がこれ以上悪化する前に、早めに相談してベストな対応を進めましょう。