
債務整理すると借金問題は解決できても「信用情報に傷がつく」ことが心配になる方が多いでしょう。
自分の信用情報については仕方がないとしても、家族にまでは迷惑をかけたくないものです。
基本的には債務整理をしても家族の信用情報に影響はありませんが、注意すべき点がいくつかあります。
今回は債務整理した場合の家族の信用情報に対する影響について解説しますので、これから債務整理を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.債務整理と信用情報の関係
債務整理をすると、借金問題を解決できます。
任意整理や個人再生をすると借金返済額を減らせて楽に支払えるようになりますし、自己破産をすれば基本的に支払が0円になります。
しかし債務整理をすると、信用情報に事故情報が登録されてしまう点がデメリットです。ローンやクレジットカードなどを一切利用できない状態になってしまうので、不便な生活を強いられるでしょう。
このように債務整理などによって事故情報が登録された状態を一般では「ブラックリスト」ともいいます。
2.債務整理しても家族の信用情報に影響はない
債務整理すると、本人の信用情報に事故情報が登録されてローンやカードを利用できなくなるのは仕方がないとしても、家族の信用情報にまで影響してしまうのでしょうか?
この点については、基本的に心配いりません。
信用情報は、それぞれの個人ごとに管理されているからです。
債務整理によって事故情報が登録されるのは、債務整理をした本人のみであり、家族の信用情報には何の情報も登録されません。
2-1.審査の際に家族の信用情報を見られない?
家族の信用情報に情報が登録されないとしても、同居の夫婦や親子などの場合「審査の際に住所などから自動的に検索されて、債務整理している家族の信用情報をチェックされるのでは?」と心配する方もおられます。
しかしこちらについても心配は要りません。
ローンやクレジットカードの審査の際、金融機関や貸金業者が参照できるのは基本的に審査を申し込んだ「本人の信用情報」のみです。
たとえ同居の家族であっても、無関係な人の信用情報をのぞき見することはできません。
もちろん審査の際に、債務整理した本人以外の家族の信用情報が自動的に表示されることもありません。
夫婦や親、子どもなどの親族が債務整理をしていても、本人以外の人はこれまでとおりにローンやカードを利用できると考えましょう。
2-2.未成年の場合には要注意
家族が債務整理をしても、本人の信用力に問題がなければローンや審査を利用できるのが原則です。
しかし本人が「未成年」の場合には注意しなければなりません。未成年は自分1人で借入ができないので、「親」を基準に審査が行われます。信用情報についても「親」の情報を参照されてしまうのです。
未成年本人が延滞や債務整理をしたことがなくても、親の信用情報に事故情報が登録されていたら、未成年の名前であっても借入はできないと考えましょう。
親が債務整理したことのある子どもがカードやローンを申し込みたい場合には、成人するまで待つか、親の事故情報が消えるまで待つ必要があります。
3.家族に対する事実上の影響
以上のように基本的には債務整理をしても家族のローンやクレジット利用には影響しませんが、注意すべき点があります。
家族が専業主婦や無職の場合の問題
親族が債務整理をしても、本人が債務整理をしなければ信用情報には傷はつきません。しかし、そもそも本人に高い信用がなければ、借入は困難です。
たとえば無職の方はクレジットカードを発行するのが難しいケースがありますし、専業主婦の方は住宅ローン審査に通らないでしょう。
このように本人に信用がない状態で親や配偶者が債務整理してしまうと、そのご一家はカードやローンを利用する手段が断たれてしまいます。
たとえば夫が会社員、妻が専業主婦の家庭で夫が債務整理をしたら、そのご夫婦は住宅ローンを利用して家を購入するのが困難となるでしょう。
債務整理による事故情報は、任意整理の場合に約5年、自己破産や個人再生の場合に約10年間登録され続ける可能性があります。
債務整理する人以外の家族に信用力がない場合、上記の期間は住宅ローンなどを利用できない不便な生活が続くことも考えておかねばなりません。
なお共働き家庭や親、子どもなどが働いて信用のある状況であれば、こういった問題は発生しないと考えてよいでしょう。
4.自社ブラック(社内ブラック)の問題点
債務整理をしたとき、「自社ブラック(社内ブラック)」にも注意が必要です。
4-1.自社ブラックとは
自社ブラックとは、各金融機関や貸金業者が独自に作っている「ブラックリスト」です。
過去に長期の延滞や債務整理をした顧客については、今後貸付をしないために社内でリスト化している貸金業者が少なくありません。
そういった独自の社内ブラックリストを「自社ブラック」や「社内ブラック」といいます。
自社ブラックは内部情報なので公開されませんが、プライバシーポリシーなどに「過去の利用履歴、債務返済状況に関する情報を社内で利用する可能性がある」などと明記しているカード会社も存在します。
例・三菱UFJニコスの場合
「④支払能力判断のための情報
お客さまが申告された資産・負債・収入および当社が取得した利用履歴・過去の債務返済状況等」
https://www.cr.mufg.jp/corporate/policy/privacy/protect_data.html
上記のように、自社内で過去の「債務返済状況」の情報を支払能力判断のために利用する、と明記しているので、三菱UFJニコスではいわゆる「自社ブラック」の情報リストがあると考えてよいでしょう。
4-2.自社ブラックは、家族の情報をみられる可能性がある
自社ブラックに関しては、信用情報機関が保有している信用情報と異なるので、「申込者本人以外の人」の情報も参照される可能性があります。
たとえばカード発行の申込みを受けたとき、以前に債務整理して自社ブラックに登録されている人と同じ住所、同じ苗字の方に該当があれば、知られてしまう可能性があるのです。すると「債務整理した人の妻、子ども」などと思われて警戒されるでしょう。
結果的に債務整理した人と同居の家族については、カードやローンの審査に通りにくくなるリスクがあるといえます。
4-3.自社ブラックがない業者もある
ただし自社ブラック情報については、情報を集積している業者としていない業者がありますし、社外に公表されるものでもありません。債務整理をした家族がいても、対象の貸金業者を絶対に利用できないとは限りません。
自社ブラック情報を蓄積していない業者であれば、過去に債務整理した家族が利用したことがあっても審査に通る可能性があります。
4-4.自社ブラックによる悪影響を避ける方法
家族が債務整理したことにより、自社ブラックの影響でカードやローンを利用しにくい影響を避けるには、どうすればよいのでしょうか?
別の貸金業者を利用する
この場合、債務整理をした家族が過去に利用したカード会社や金融機関を避けるようお勧めします。自社ブラックは、あくまで「社内独自のブラックリスト」であり、社外へ共有されません。
たとえば三菱UFJニコスのカード債務を支払えなくなって任意整理すると、三菱UFJニコスでは自社ブラック情報が登録されて、家族にも悪影響が及ぶ可能性があります。
一方で、これまで利用したことのなかった三井住友カードであれば、家族であっても発行を受けられる可能性があるといえるでしょう。
もちろん家族自身に信用力があることが前提です。
債務整理をした家族がいるなら、その人が利用したことのないカード会社や金融機関を利用しましょう。
4-5.グループ間の自社ブラック情報共有について
一般に「グループ企業では自社ブラック情報が共有されるのでは?」と思われていることもあります。
グループ企業とは、「三菱UFJ系列」や「三井住友系列」などの系列企業や関連企業。たとえば三井住友カードで債務整理をしたら、関連会社であるプロミス(SMBCコンシューマーファイナンス)へも情報が共有されてしまうのでしょうか?
こちらについては、その企業によって取扱いが異なるので絶対的な指標はありません。
ただ現在では「個人情報保護法」のもと、個人に関する情報を厳格に管理するよう求められます。支払能力や延滞情報、債務整理情報という重要な個人情報について、やみくもに共有されることはないでしょう。
どうしても心配であれば、対象の貸金業者や金融機関に対し、個人情報の利用状況を確認してみてください。
またグループ企業間での共有をしないよう申し入れが可能な企業もあるので、一度ホームページなどで調べてみるのもよいでしょう。
たとえば三菱UFJ銀行では、「顧客情報の共同利用」の停止申し入れを受け付けています。
https://www.bk.mufg.jp/info/20150610_kojinjouhou.html
社内情報の共有を停止してもらいたい場合、一度電話などで問い合わせてみてください。
まとめ
債務整理をしても、基本的に家族の信用情報には何の影響もありません。家族自身に信用があれば、ローンやクレジットカードを利用できます。
ただし自社ブラック情報が登録された場合、同居の家族がローンやカードを申し込むと審査に落とされる可能性もあります。そのようなときには、債務整理した人が利用したことのない別の業者のローンやカードを利用しましょう。
債務整理による家族の信用情報への影響について心配しすぎる必要はありません。借金返済が苦しい場合には、お早めに弁護士までご相談ください。