
「信用情報」に事故情報が登録されると、ローンやカードを利用できなくなることが知られています。
実はこうした一般的な信用情報とは別に、カード会社や金融機関独自の「自社ブラック情報」があるので、注意しましょう。
今回は「信用情報」と「自社ブラック情報」の違いやローン・カードの審査にとおるための対策方法について、解説します。
延滞や債務整理による信用情報への影響が心配な方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.信用情報とは
信用情報とは、個人の借入や返済状況に関する情報です。日本では3つの政府指定による信用情報機関があり、そこで信用情報が管理されています。
全国の金融機関や貸金業者は1つまたは複数の信用情報機関へ加盟しており、ローンやカードの申込みを受け付けるとその人の信用情報を参照します。そこで問題のある情報が登録されていたら、審査に落とすという仕組みです。
長期延滞や債務整理などの事情があると、その人の信用情報には「事故情報」というネガティブな情報が登録されてしまいます。そうなると、信用を失うのでどの金融機関や貸金業者もローンやカードの審査に通してくれません。
そこで過去に延滞や債務整理をしていると、どこの貸金業者や金融機関へ申し込んでもローンやカードを利用できなくなってしまうのです。
こういった状態を、一般では「ブラックリスト」や「金融ブラック」などといったりします。
「リスト」とはいいますが、実際に何らかの名簿があるわけではありません。
「信用情報にネガティブ情報が登録されてローンやカードの審査に通らない状態」をわかりやすく「ブラックリスト」といっているのだと理解しましょう。
2.自社ブラックとは
自社ブラックは、各社が独自に作っているリスクの高い顧客に関する情報です。
過去に延滞されたり債務整理をされたりして迷惑をかけられた顧客が登録されています。
延滞や債務整理、貸倒によって損失を被った場合、再度同じ人には貸付をしたくないと考えるでしょう。そこでそういった問題のある人の情報を集約し、同じ人から借り入れの申請があっても審査に通さない扱いにしているのです。
そのための情報が「自社ブラック」であり、「社内ブラック」とよばれることもあります。
自社ブラック情報は信用情報機関に登録される「信用情報」とは別に、各社内において管理されています。またすべての貸金業者や金融機関に自社ブラック情報があるとも限りません。
あえて自社ブラック情報を集約せず、過去に迷惑をかけられた相手であっても貸付をする消費者金融会社も珍しくはありません。
3.信用情報と自社ブラックの違い
以下ではいわゆる信用情報と自社ブラックの違いを、項目別にご紹介します。
【信用情報と自社ブラックの違い 一覧表】
信用情報 | 自社ブラック | |
情報が共有される範囲 | すべての信用情報機関で共有 | 基本的に1社のみ |
借入制限が起こる範囲 | すべての金融機関、貸金業者 | 基本的に1社のみ、稀にグループ企業も |
情報の保有期間 | 5~10年程度 | 制限なし |
家族への影響 | なし | 影響する可能性がある |
3-1.情報が共有される範囲
信用情報と自社ブラックでは、問題となる情報が登録される「範囲」が異なります。
信用情報
信用情報の場合、延滞情報や事故情報などの情報は基本的に「すべての信用情報機関で共有」されます。
日本の貸金業者や金融機関は1つ以上の信用情報機関へ加盟しているので、いったん信用情報機関に事故情報が登録されると「すべての貸金業者や金融機関に参照される」と考えましょう。
自社ブラック
自社ブラック情報は、その1社のみが把握する情報です。個人情報保護法のもとに厳格な管理が要請されるので、他社へ漏えいされる可能性はほとんどありません。
3-2.借入制限が起こる範囲
信用情報と自社ブラックでは、「ローンやクレジットカードの利用ができない範囲」も異なります。
信用情報
信用情報に延滞情報や債務整理情報が登録されると、すべての金融機関や貸金業者で借入が困難になります。
信用情報に傷がついている状態では、どの銀行やカード会社、消費者金融でもローン、カード、キャッシングなどの利用ができないと考えましょう。
自社ブラック
自社ブラック情報が登録されても、利用できないのはその貸金業者や金融機関のみです。
たとえば三菱UFJニコスで不祥事を起こして自社ブラックに登録されたとしても、利用できないのは三菱UFJニコスのみ。三井住友カードなどの別会社であれば、カードを発行してもらえる可能性があります。
ただし自社ブラックの場合でも、グループ企業間では情報が共有される可能性があります。
たとえば三菱UFJ系、三井住友系など、金融会社はグループ化しているケースが少なくありません。
必ずではありませんが、こういった系列企業では自社ブラック情報が共有されて、債務整理したことのない会社でも審査に通らない可能性があるので、注意しましょう。
3-3.情報の保有期間
信用情報と自社ブラックでは、情報の保有期間(登録期間)も異なります。
信用情報
信用情報の場合、各信用情報機関で情報登録期間が定められています。
たとえばJICCやCICでは、任意整理後5年程度で事故情報が抹消されます。個人再生や自己破産をした後も、基本的には5年程度で情報が消えます。
一方KSCの場合、任意整理後の事故情報登録期間は約5年ですが、個人再生や自己破産をした後の登録期間は約10年です。
このように、信用情報機関によって扱いが異なりますが、基本的に事故情報の登録期間には制限があり、一定期間が経過すると消去される扱いになっています。
自社ブラック
自社ブラックの場合には、情報登録期間に制限がありません。各社の判断に委ねられています。
5年や10年が経過しても消える保証はなく、その会社が存続する限り延々と情報が登録され続ける可能性もあります。
つまり、いったん自社ブラック情報が登録されてしまったら、極端な場合にはその会社で一生借入ができない可能性もあります。
信用情報よりも自社ブラックの方が、期間的には悪影響が大きくなるといえるでしょう。
3-4.家族への影響
次に情報が登録されてしまった場合の家族への影響をみてみましょう。
信用情報
3つの信用情報機関で登録される「信用情報」は、個人ごとに管理されるものです。
たとえ家族であっても、他者には影響しません。
たとえば夫が債務整理をして信用情報に事故情報が登録されても、妻の信用情報には傷はつきません。妻自身に長期延滞や債務整理の経歴がなかったら、妻はカードやローンを利用できます。
自社ブラック
自社ブラックの場合、社内の情報利用方法は各社の判断に委ねられます。基本的には個人ごとの情報であるべきですが、ある人の債務整理情報がその家族の審査の際に流用される可能性も0とはいえません。
たとえば同じ住所の夫が過去に債務整理して自社ブラック情報が登録されていたら、妻がカードを申し込んだときに夫のブラック情報をみられてしまう可能性があります。
そうなったら妻自身に債務整理歴がなくても、その会社では借入ができないでしょう。
4.ブラックによる不利益を避ける方法
ブラック情報が登録されていると、ローンやカードの審査に通りません。
上記のように、一般に認識されている「ブラック情報」には「信用情報」と「自社ブラック」の2種類があるといえます。ローンやカードの審査に落ちる場合には、どちらが原因になっているのかで対処方法が異なってきます。
4-1.信用情報が原因の場合
信用情報に事故情報が登録されているためにローンやカードを利用できないなら、基本的には時間の経過によって事故情報が消えるのを待つしかありません。
ただ、事故情報を消せるケースもあります。
たとえば時効援用後に事故情報が登録されてしまった場合、過払い金請求によって事故情報が登録されてしまった場合、借入が古い場合などには、適切な手続きをとることで事故情報を消去できるケースが少なくありません。
信用情報から事故情報を消せれば、ローンやカードを利用できる状態に戻ります。
ご本人が対応するより弁護士が手続きを代行した方が、情報抹消の手続きをスムーズに進めやすいので、お悩みの方がおられましたらご相談ください。
4-2.自社ブラックが原因の場合
自社ブラックが原因でローンやカードの審査に落ちてしまう場合には、その会社以外のローンやカードを申し込みましょう。
自社ブラック情報は基本的にその1社の内部でしか共有されないので、他社であれば問題なくローンやカードの審査に通る可能性が高いといえます。
また自社ブラックは同居の家族にも影響する可能性があります。ご本人に特段問題がなくても配偶者や親、子どもなどが債務整理したり延滞したりした経緯があるなら、その貸金業者は避けるのが無難でしょう。
まとめ
信用情報と自社ブラックは一見似ているので混同されがちですが、全く異なる根拠によるものです。
ローンやカードの審査に通らない場合、信用情報が原因であれば事故情報を消せる可能性もあります。
当事務所では、弁護士が信用情報消去の手続きを代行していますので、心当たりがあって事故情報を消去してほしい方がおられましたら、一度お気軽にご相談ください。