
いったん信用情報に事故情報が登録されてしまうと、ローンやクレジットカードを一切利用できない非常に不便な状態になってしまいます。
登録された事故情報を消すことはできないのでしょうか?
事故情報が消えるまで、基本的には一定時間の経過を待つ必要がありますが、状況によっては事故情報を抹消できる可能性があります。
今回は信用情報から事故情報を消せるケースや方法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.信用情報が自然に消えるのはいつ?
信用情報に事故情報が登録されると、消費者金融のキャッシング、クレジットカードの発行、携帯電話端末の分割払い、住宅ローンや車のローンなど、「借金」や「分割払い」を一切利用できなくなってしまいます。
事故情報が登録されていると、貸金業者や金融機関の「審査」に落とされてしまうためです。
このように信用情報に事故情報が登録された状態を、一般的には「ブラックリスト」とよぶケースもあります。
ブラックリストとは、実際に何らかのリストに名前が載るのではなく「信用情報に事故情報が登録された状態」をいいます。
1-1.信用情報に事故情報が登録される原因
信用情報に事故情報が登録されるのは、主に以下のような場合です。
- 借金や分割払いの長期延滞
- 債務整理をした
事故情報が登録されている限り、どのようなローンやクレジットカード会社へ申込みをしても審査に通してもらえません。
1-2.事故情報が自然に消えるまでの期間
一定期間が経過すれば、事故情報は自然に抹消されます。
たとえば借金返済の延滞によって事故情報が登録された場合、事故情報の登録期間は「延滞状態の解消後、約5年間」。つまり延滞分をすべて支払って、遅延状態を解消できればその後5年程度待てば事故情報を消してもらえる可能性が高いといえます。
次に債務整理によって事故情報が登録された場合、事故情報の登録期間は債務整理の種類によって異なります。
「任意整理なら手続き後約5年」ですが、「個人再生や自己破産の場合には約10年間」登録され続けるケースがあります。
いずれにしても借金の長期延滞や債務整理によって信用情報に事故情報が登録されてしまったら、「5~10年程度はローンやクレジットカードを利用できない」ことを覚悟しなければなりません。
2.事故情報を消せるケースとは
実は一定の条件を満たす場合、上記の期間が経過しなくても登録された事故情報を消せる可能性があります。
具体的には以下の条件に該当する場合です。
- 時効援用した
- 過払い金請求をした
- 借入時期が古い
- まったく身に覚えがない
以下でそれぞれのケースについてみていきましょう。
3.時効援用した
借金を長期にわたって支払っていない場合、「時効援用」によって借金を消滅させられる可能性があります。時効援用とは、「時効による利益を受けます」という意思表示。通常は内容証明郵便で時効援用通知を送って対応します。
消費者金融やカード会社、銀行などからの事業者からの借金の場合、基本的には「最終弁済日の翌日から5年間」返済していなければ、時効が成立します(ただし例外もあります)。
時効援用をしても、信用情報に事故情報は登録されないのが原則ですが、稀に時効援用後に事故情報が登録されてしまうケースもあるため注意しなければなりません。
このように時効援用後に事故情報が登録された場合には、抹消できる可能性があります。
3-1.裁判を起こされている場合は要注意
5年以上の長期にわたって返済をしていない場合でも、その間に債権者から裁判を起こされていたら時効が成立しない可能性が高くなります。裁判をされると、判決が確定してから10年間時効が延長されてしまうからです。
その場合、最終弁済日から5年以上が経過していても、時効援用によって借金を帳消しにできません。その後に信用情報に事故情報が登録されたとしても、事故情報も消せない可能性が高くなります。
また債務者本人が負債の存在を認めてしまった場合も同様です。債務を承認すると、時効が更新されて5年間延長されてしまいます。
「負債を認めます」といった場合だけではなく「支払います」と述べたり、利息の一部を支払ったりするだけでも債務承認になってしまうので、くれぐれもそういった言動をしないよう注意してください。
3-2.時効援用に関心のある方は弁護士へご相談を
借金を長期にわたって延滞し続けていて時効援用や事故情報の抹消をしたいとき、専門知識のない方が自己判断で行動するとかえって不利益を受ける可能性があります。
たとえば債権者から身を隠して生活している場合、自分の住所を書いて時効援用通知を送ると今の居場所を知られてしまうでしょう。
確かに時効援用に成功すれば問題ないかもしれませんが、知らない間に裁判を起こされて時効が更新されている可能性もあります。その場合、時効援用通知を送ることにより「やぶ蛇」となって督促を再開させてしまうリスクが高くなるのです。
また信用情報の抹消請求も、ご本人が行うより弁護士が対応する方が成功率は上がります。
時効援用をしたい方、時効援用したら事故情報が登録されてしまった方は、お早めに弁護士までご相談ください。
4.過払い金請求したらブラックリスト状態になった
過去に利息制限法を超過する高利率で借入をしていた方は、貸金業者へ「過払い金請求」できる可能性があります。
過払い金請求をする場合、すでに借金を自力で完済している状態ですので事故情報は登録されません。ただ稀に過払い金請求がきっかけで事故情報が登録されてしまうケースもあるので注意が必要です。
よくあるのは「借金返済中に過払い金請求する」パターン。借金があるので、当初は任意整理によって借金を整理しようと思い、債権者宛に任意整理の通知を送ります。この時点で債権者が信用情報機関へ通知を送り、事故情報が登録されてしまいます。
ところが後に利息制限法に引き直して計算すると、実は過払いとなっており借金は完済されていたことが発覚します。もちろん過払い金は取り戻せますが、いったん登録された事故情報を消してもらえないケースが少なくありません。
こういったケースであれば、債権者へ事故情報の抹消を要求することで、事故情報を消せる可能性があります。
過払い金請求をしたら、その後なぜかカードやローンの審査に通らなくなった方がおられましたら信用情報を訂正できる可能性が高いので弁護士までご相談ください。
5.借入時期が古い
消費者金融やカード会社からの「借入時期」が古い方も要注意です。
実は借入時期が平成16年より前の方は、登録された事故情報を抹消請求できる可能性があります。
当時は消費者金融などとの契約書において、信用情報への登録についての記載がなかったためです。契約書に明示されていないにもかかわらず本人の同意なしに事故情報の登録を申請されたなら、当事者には抹消請求をする権利が認められると考えられています。
多くの消費者金融やカード会社の場合には平成16年より前の契約が対象ですが、アイフルの場合、平成23年頃まで契約書に信用情報についての記載をしていなかったケースが散見されます。同社の場合には「平成23年頃より前の契約」であれば事故情報を抹消できる可能性があるといえるでしょう。
消費者金融やクレジットカードの利用時期が古い方は、一度事故情報の抹消請求を検討してみてください。
6.まったく身に覚えがない
ときにはまったく身に覚えがなくても事故情報を登録されてしまうケースがあります。
たとえば「同姓同名」で「同じ生年月日の人」がいる場合。
かつて本当に、まったく無関係な同姓同名の人が借金を長期延滞したために、事故情報が登録されてブラックリスト状態になってしまった方がおられました。
ご本人は借金の延滞も債務整理もしたことがないので不思議に思っていたところ、信用情報の開示請求をして詳細を調査すると、「人違い」で事故情報が登録された事実が明らかになったのです。
延滞や債務整理の経験が一切ないのになぜかローンやカードの審査に通らない方は、一度ご相談ください。
7.信用情報から事故情報を消す方法
信用情報に誤って事故情報が登録された場合、待っていても自然に消去してもらえません。ブラックリスト状態を解消するには、自分で抹消請求する必要があります。
ただし信用情報機関へ直接「事故情報を抹消してほしい」と要求しても受け付けてもらえないケースが多いので注意しましょう。そうではなく、かつて信用情報機関へ延滞や債務整理などの通知を行った「貸金業者や金融機関」に訂正の申し入れをしなければなりません。
加盟事業者から信用情報機関へと、間違った情報を消去するよう通知してもらわねばならないのです。貸金業者や金融機関が信用情報機関へ通知をすれば、信用情報機関側で間違った事故情報を抹消する、という流れになります。
信用情報から事故情報を抹消するのは簡単ではありません。自分で貸金業者や金融機関に申し入れをしなければなりませんが、業者側が必ずしも誠実に対応するとも限らないためです。
より確実に事故情報を消去してブラックリスト状態から脱却するためには、専門的な知識とスキルをもった弁護士に依頼すべきといえるでしょう。
8.事故情報の抹消は弁護士までご相談を
当事務所では、弁護士が間違った信用情報の訂正請求を代行しています。
本来は事故情報が登録されるべきではないのに、いつまでもブラックリスト状態のまま放置するとデメリットが大きくなるでしょう。クレジットカードを使えず日常生活で不便を感じますし、住宅ローンや車のローンも利用できません。
今回ご紹介した「事故情報を消せる条件」に心当たりがあるなら、早めに情報の抹消手続を進めましょう。信用情報の開示請求を行いたい方、事故情報を消したい方は、お早めに弁護士までご相談ください。