
「借金返済を滞納したり債務整理したりすると、信用情報に傷がついてローンやクレジットカードを利用できなってしまう」
そんな話を聞いたことのある方も多いでしょう。
そもそも「信用情報」とは何なのでしょうか?
なぜ信用情報に傷がつくとローンやクレジットカードを使えなくなるのでしょうか?
今回は弁護士がそんな疑問にお答えします。
借金している方、債務整理を検討している方など信用情報が気になっているならぜひ、参考にしてみてください。
1.信用情報とは
信用情報とは、個人の信用や支払能力、借入状況などに関する情報です。
- 氏名、生年月日、住所、電話番号などの個人情報
- 現在の借入状況(契約の種類、契約年月日、借入金額、残債の金額など)
- 借入申込みの履歴
- 返済を滞納した情報
- 債務整理情報
上記のような情報が登録されています。
信用情報を「個人信用情報」と呼ぶケースもよくあります。
信用情報はどのように利用される?
信用情報はどういった目的で利用されているのか、みてみましょう。
融資やカードの審査のため
信用情報は、金融機関や貸金業者がお金を貸し付ける際に行う審査時に参照されます。
銀行やカード会社、信販会社などがユーザーから融資やカード発行の申込みを受けると、申込者が本当に信用できる人かどうかを確認しなければなりません。支払能力のない人に貸付をすると、損失を被ってしまうためです。他に借入はないか、これまでに滞納したことがないか、債務整理した経歴はないかなど、詳しい情報が必要となるでしょう。
そこで金融機関や貸金業者は信用情報を参照し、申込者を信用して貸付を行ってもよいか判断します。
信用情報に信用を落とすような情報が登録されていると、融資やカードの審査に通りにくくなると考えましょう。
借金の総量規制の管理のため
信用情報は「借金の総量規制」とも関係があります。借金の総量規制とは、年収の3分の1までしか貸付をしてはならないというルールです。
かつて無制限に貸付が行われてたくさんの多重債務者が生み出されてしまったことへの反省から、総量規制がもうけられました。今は年収の3分の1を超える融資を申し込もうとしても、拒否されてしまいます。
このとき、年収の3分の1以上の借入をしようとしているかどうかを判断するための材料が信用情報です。
消費者金融やカード会社はユーザーから借入やキャッシングなどの申込みを受けると、その人の信用情報を参照して借入残高を確認します。ここで年収の3分の1に達していたら、それ以上の貸付を行いません。
なお銀行ローンには借金の総量規制が適用されないので、銀行カードローンなどの借入であれば年収の3分の1を超えていても利用できる可能性があります。
2.信用情報に傷がつくってどういうこと?
世間ではよく「信用情報に傷がつく」といわれるケースがありますが、これはどういった状態なのでしょうか?信用情報に傷がつくと、住宅ローンやクレジットカードを利用できなくなる可能性があります。
「信用情報に傷がつく」とは、信用情報に信用を低下させるような情報が登録されることです。
たとえば以下のような情報が登録されると、「信用情報に傷がついた」といわれます。
- 延滞情報
借金返済を延滞した情報です。2~3ヶ月分滞納すると登録されるケースが多数です。
- 代位弁済情報
銀行カードローンなどの返済を滞納すると、保証会社が「代位弁済」を行います。すると代位弁済情報が登録され、本人の信用力が一気に低下します。
- 官報公告情報
個人再生や自己破産をすると、官報公告されます。官報公告とは、政府の発行している機関誌である「官報」に破産や個人再生の情報が登録されること。
官報公告情報が登録されていると、過去に破産や個人再生をしたとわかるので、大きく信用が低下します。
- 異動情報
異動情報とは、さまざまな場合に信用情報に登録されるネガティブな情報です。
延滞した場合、債務整理した場合、カードを強制解約された場合などに「異動情報」が登録される可能性があります。
このように信用情報に傷がついてしまうと、基本的にローンやクレジットカードなどを利用できなくなります。
信用情報に登録されるネガティブ情報を「事故情報」とよぶケースも多いので、合わせておぼえておきましょう。
2.信用情報とブラックリストの関係
世間ではローンやカードを利用できない状態を「ブラックリスト」というケースが多々あります。
ブラックリストとは何なのでしょうか?
ブラックリストは「信用情報に傷がついている状態」を意味します。
「リスト」とはいっても、実際にどこかに名簿などのリストは存在しません。
信用情報に傷がついてローンやクレジットカードの審査に通らなくなった状態を、わかりやすく「ブラックリスト」といっているだけです。
ブラックリスト状態になったら、住宅ローンや車のローンの審査に通りませんし、キャッシング、クレジットカードの新規発行など一切受けられません。
保証人にもなれないので、住宅ローンや奨学金の連帯保証人になることも不可能となります。
3.信用情報機関とは
信用情報は、「信用情報機関」という特別な組織が管理しています。
信用情報機関は政府によって指定を受けており、日本には以下の3つが存在します。
- JICC(日本信用情報機構)
JICCは、消費者金融が中心になって組織している信用情報機関です。
- CIC(株式会社シーアイシー)
CICは、カード会社や信販会社が中心となって組織している信用情報機関です。
- KSC(全国銀行個人信用情報センター)
KSCは銀行や信用金庫などの「金融機関」が組織している信用情報機関です。
このように政府によって指定された信用情報機関を「指定信用情報機関」といいます。
3-1.金融機関や貸金業者は信用情報機関に加盟している
銀行などの金融機関やカード会社、消費者金融などの貸金業者は、3つの信用情報機関のうちいずれかに加盟しています。
融資やカード発行の申込みを受けると、金融機関や貸金業者はそれぞれ自社が加盟している信用情報機関へ情報照会し、申込人の信用情報を確認します。
そこで異動情報などのネガティブ情報が登録されていたら、審査に落とすという仕組みです。
一方で信用情報に問題がなさそうであれば、年収や年齢などの他の条件をみて融資を実行するか、あるいはカードを発行するか検討します。
金融機関や貸金業者の加盟する信用情報機関は1つとは限りません。
カード会社や信販会社がJICCとCICの両方に加盟しているケースも多いですし、銀行がCICとKSCに加盟していたり、3つすべての信用情報機関に加盟していたりするケースもあります。
3-2.信用情報は共有されている
日本の指定信用情報機関は3つあり、それぞれが個人信用情報を管理しています。
それであれば、1つの信用情報機関で事故情報が登録されても別の信用情報機関には伝わらず、別の信用情報機関に加盟している金融業者からは借入ができるのでしょうか?
答えはNOです。
なぜなら、各信用情報機関が管理する個人情報は3社で共有されているからです。
延滞情報や債務整理情報などの事故情報は基本的に全体で共有されるので、1つの信用情報機関で登録されたら他の信用情報機関にも伝わると考えましょう。
たとえばアイフルで返済を延滞してJICCに延滞情報が登録されると、CICやKSCにも伝わって銀行ローンも借りられない可能性が高くなります。
信用情報に傷をつけたくなければ、借金返済の延滞や債務整理を避けるべきといえるでしょう。
4.信用情報から事故情報を消せるのか?
そうはいっても、やむをえず借金を延滞したり債務整理を余儀なくされたりするケースもあります。
そんなとき、信用情報に登録されてしまった事故情報を消す方法はあるのでしょうか?
4-1.完済した場合
借金の延滞によって事故情報が登録されてしまった場合、完済すると情報が消える可能性があります。
ただしいったん延滞情報が登録されると、完済したからといってすぐに情報が削除されるわけではありません。信用情報機関によっても取扱いが異なりますが、完済後5年程度は事故情報が残ると考えましょう。
完済してから5年くらいが経過すれば延滞情報が消えて、また借入ができるようになる可能性があります。
4-2.時間の経過によって自然に消える
債務整理をすると、事故情報が登録されます。ただしこちらも時間の経過により、自然に情報が抹消されるのが通常です。
任意整理であればだいたい5年程度、自己破産や個人再生をした場合には完全に情報が削除されるまでに10年程度かかる可能性があります。
債務整理の種類によっても一般的な事故情報の登録期間が異なるので、手続選択の参考にしてみてください。
4-3.時効援用した場合
借金を長期にわたって返済していない場合「時効援用」によって支払を免れることができます。時効援用とは、わかりやすく言うと、時効なので債務は払いませんと主張することです。
まず時効援用した場合、一般の債務整理とは違って事故情報は登録されません。ところがまれに、時効援用後に事故情報が登録されてしまうケースがあります。
そういった場合には、延滞してから5年が経過していなくても事故情報を消せる可能性があります。
なお時効援用をすると各信用情報機関で「完了」という情報が登録されます。
4-4.過払い金請求した場合
任意整理をすると、基本的には信用情報に事故情報が登録されます。
ただし利息制限法へ引き直し計算した結果「過払い」になっている場合には、事故情報は登録されません。
「過払い」とは、利息を払いすぎて借金を完済している状態です。すでに自力で借金を完済しているのですから、事故情報を登録する理由になりません。
ところがまれに、任意整理の通知を送付したことによって事故情報が登録されてしまうケースがあります。そういった場合には、既に負債を完済したことを伝えて事故情報を消せる可能性があります。
4-5.初回の契約が古い場合
借入時期が古いケースでも事故情報を消せるケースがあります。
基本的には平成16年(2008年)より前に借入をした場合、アイフルの場合には平成23年(2011年)より前に借入をした場合が対象です。
平成16年(アイフルの場合には平成23年)より前には、貸金業者との契約書に「信用情報への登録」についての記載がなかったため、契約の古い方は事故情報を消してもらえる可能性があるのです。
また現在の契約が平成16年より後でも、いったん完済した経歴があって初回の借入が平成16年より前であれば、事故情報を消せるケースが少なくありません。
契約時期は貸金業者へ情報照会すれば調べられますし、弁護士による調査も可能なので、信用情報から事故情報を消したい方は、よければ一度当事務所までご相談ください。
まとめ
信用情報は、政府の指定する信用情報機関が管理する「個人の借入状況や信用、支払能力に関する情報」です。
信用情報に傷がつくといわゆる「ブラックリスト状態」になってローンやクレジットを利用できなくなります。
いったん信用情報に傷がついてしまっても、さまざまな事情によって事故情報を消せるケースが少なくありません。弁護士が対応すると、ご自身で対応するよりスムーズに情報を抹消できるケースも多々あります。
当事務所では、間違った事故情報の削除請求を積極的に支援しております。ご自身では事故情報を消せるかどうかわからない方、弁護士に事故情報の削除を任せたい方は、お気軽にご相談ください。