事業経営しているなら「法人カード(ビジネスカード)」を発行しておくと、事業決済に利用できて便利です。
法人カードは個人カードと比べて付帯サービスも充実しているケースが多く、1枚あればさまざまなメリットを受けられるでしょう。
しかし代表者の信用情報に事故情報が登録されている「ブラックリスト状態」の場合、審査に落とされるリスクがあります。
法人カードの発行を受けるのは不可能なのでしょうか?
今回は法人カードとはどういったカードなのか、代表者がブラックリスト状態でも発行できる可能性があるのか解説します。
会社経営している方や個人事業を営んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
1.法人カードとは
法人カードとは、株式会社などの「法人」や「個人事業者」向けのクレジットカードです。
事業経営をしていると、経費の決済などのために高額な支払いが必要となる場面が多々あります。従業員にカードを渡して決済させたいニーズもあるでしょう。
また代表者の生活費決済と事業費決済が混じってしまうと、会社の財務状況を把握しにくくなってしまいます。
そんなときには代表者の個人カードとは別途、事業者専用の「法人カード」を発行しておくと便利です。
多くのクレジットカード会社が事業者向けに法人カードサービスを提供しており、主に事業経費の決済のために利用されています。
「法人カード」とはいっても法人化は必ずしも必須ではありません。個人事業者でも審査に通過すれば法人カード(ビジネスカード)を発行してもらえます。
このように法人カードは「ビジネスに特化したカード」といえるでしょう。
2.法人カードの種類
法人カードには以下の2種類の呼称があり、カード会社によっては状況によって使い分けられている場合があります。
2-1.ビジネスカード
ビジネスカードは中小企業や個人事業者向けの法人カードです。
一般的には従業員数が20名以下の場合などに「ビジネスカード」が発行されます。
2-2.コーポレートカード
コーポレートカードは一定以上の規模の法人に発行される法人カードです。
カード会社にもよりますが、従業員数が20名を超えるとコーポレートカードを発行されるケースが多くなってきます。
なおビジネスカードもコーポレートカードも機能としてはほとんど同じです。会社の規模によって呼称が分けられているだけと理解してよいでしょう。
3.法人カードと個人カードの違い
法人カードと個人カードの違いは以下のとおりです。
法人カード | 個人カード | |
支払回数 | 原則1回 | 分割払い、リボ払い可能 |
キャッシング機能 | 国内キャッシングはできないケースが多い | キャッシング機能が通常付帯している |
年会費 | 高い | 無料または安い |
利用限度額 | 高い | 低い |
引き落とし口座 | 事業用口座設定可能 | 個人名義口座 |
決済の目的 | 事業経費の決済 | 生活費決済 |
付帯サービス | 充実している | カードの種類による |
家族カード、従業員カード | 従業員カード発行可能 | 家族カード発行可能 |
以下でそれぞれの項目につき、具体的に確認しましょう。
3-1.支払回数
法人カードの場合、支払回数は原則的に1回払いとなります。ただし最近では少数ではありますが、法人カードでも分割払いやリボ払いに対応するカード会社が登場しています。
個人カードであれば標準的に分割払いやリボ払いを利用できます。
3-2.キャッシング機能
法人カードの場合、海外キャッシングを利用できるケースが多くみられます。ビジネスマンは海外出張が多く、海外での利用が見込まれるためです。
一方、国内キャッシングは利用できない法人カードが多数です。
ただし最近では国内キャッシングが付帯するビジネスカードも登場しています。
個人カードの場合には標準的に、国内キャッシング機能が付帯しているものが一般的です。
3-3.年会費
法人カードの年会費は比較的高額です。標準的に1~5万円程度の年会費がかかるカード会社が多いでしょう。ただし年会費が1000円などの安価な法人カードもないわけではありません。
個人カードの場合、年会費が無料のカードもたくさんありますし、有料であっても1000~2000円などの低額で発行できるケースが多数です。
3-4.利用限度額
法人カードの場合、決済すべき事業経費の金額が高額になるケースが多いので、利用限度額が比較的高額です。
個人カードの利用限度額は、20~50万円程度の低額となるケースが多いでしょう。
3-5.引き落とし口座
法人カードの場合には、法人名義口座や個人事業主の屋号つき口座など、「事業用口座」を引き落とし口座として設定可能です。
個人カードの場合には、個人名義口座しか設定できません。屋号つきの口座や法人名義口座は引き落とし口座に設定できないのが通常です。
3-6.決済の目的
法人カードの目的は事業経費の決済です。生活費を一切決済できないわけではありませんが、基本的には事業に関する賃料支払、消耗品の購入、出張にかかる経費、仕入れなどに利用されます。
個人カードの目的は生活費決済です。事業費を決済してはならないわけではありませんが、毎日のスーパーやコンビニ、家電量販店やネット通販などに利用する方が多いでしょう。
3-7.付帯サービス
法人カードは比較的付帯サービスが充実しています。海外旅行や国内旅行の保険、空港ラウンジの利用、専門家への相談サービス、コンサルサービスなど、それぞれのカード会社が工夫してサービス提供しています。マイルが貯まりやすいカードが多いのも特徴的です。
個人カードの場合にもカードによっては付帯サービスを利用できますが、法人カードほどには充実していないケースが多数となっています。
3-8.家族カード、従業員カード
法人カードでは、通常「家族カード」を発行できません。事業費決済を目的とするものであり、代表者の家族が生活費決済目的で利用することを予定していないからです。
その代わり、従業員が利用できる「従業員カード」を発行して決済担当の従業員に使わせることができます。
また家族が役員や従業員となっていて事業費の支払いをする場合には、家族に従業員カードを発行して事業費決済をさせてもかまいません。
4.法人カードを発行するメリット
法人カードを発行すると、以下のようなメリットがあります。
4-1.経費を管理しやすくなる
事業関連費用については法人カードで支払い、社長の個人的な生活費などの支出は個人カードで支払うことにより、事業経費とそれ以外の支出を明確に区別しやすくなります。
経費の計上漏れなどのミスも防ぎやすくなるでしょう。
4-2.事務の効率化
クレジットカードを利用すると費用の支払いをまとめて後払いできるので、決済の都度現金や預金を用意する必要がありません。
従業員に従業員カードを1枚渡しておけば、ネットなどでもすぐに決済できて便利です。
経理に関する事務を効率化できるメリットがあるでしょう。
4-3.キャッシュフローを効率化できる
法人カードを発行すると、支払いを後払いにできるので現預金がなくても経費の決済ができます。
キャッシュフローを改善する効果も期待できるでしょう。
4-4.付帯サービスが充実している
法人カードには海外旅行保険やコンサルサービス、空港ラウンジ利用、マイルがたまりやすいなどいろいろな付帯サービスがついているものが多数です。
ETCカードも発行できるので、法人名義の車で高速道路を利用される方も便利に利用できるでしょう。
5.法人カードの注意点
法人カードを利用する際には以下のような点に注意が必要です。
5-1.年会費が高い
法人カードは年会費の高いものが多数です。
事業規模が小さい個人事業主や1人法人などで、やみくもに法人カードを発行すると、得られるリターンよりも出費の方が多くなる可能性があります。
そういったケースではわざわざ法人カードを発行せずとも、個人カードで十分対応できるでしょう。
5-2.分割払い、リボ払いを設定する場合の注意点
最近では法人カードでも分割払いやリボ払いに対応するものが増えています。
しかし法人カードで分割払いやリボ払いを多用すると高い危険が発生するので注意しましょう。分割払いやリボ払いを利用すると、高額な手数料や利息が発生するからです。
個人カードであれば限度額も低く、立替元本が小さいので発生する手数料や利息も少額となります。
一方で法人カードの場合、利用額が高額なため付加される手数料や利息もより高額になります。
法人カードで分割やリボ払いを利用するとかえって財務を圧迫し、資金繰りを悪化させてしまうリスクがあるのでくれぐれも多用は控えてください。
6.社長(代表者)がブラックリスト状態でも法人カードを発行できる?
法人カードを発行する際にも、カード会社で審査が行われます。
代表者の信用情報に事故情報が登録されていていわゆる「ブラックリスト」状態になっていても、審査に通過できるのでしょうか?
6-1.法人カードの審査項目
まずは法人カードの審査項目を確認しましょう。
- 直近の売上高
- 直近の経常利益
- 会社の資産内容
- 代表者の信用情報
法人カードの場合、個人カードと違って「法人の資産や業績」が重要な審査項目となります。
決算書の内容から、直近の売上高の推移や経常利益、資産内容などを確認されると考えましょう。
業績が良ければカードを発行してもらいやすくなりますが、赤字企業では審査に通りにくくなります。
代表者の信用情報も参照されるのが通常です。社長が個人的に借金を滞納したり債務整理を行ったりしていわゆるブラックリスト状態になっていたら、審査には通りにくくなるでしょう。
ただし法人カードの場合、個人カードと異なり社長個人の信用は絶対的ではありません。会社の業績が良好で、年会費も高額なカードなどであれば審査に通る可能性もないとは言い切れません。
結論として「社長が金融ブラックリスト状態の場合、不利にはなるが絶対に審査に落ちるとは限らない」といえるでしょう。
7.事故情報は消去できる可能性がある
いったん金融事故を起こして事故情報が登録されてしまっても、状況によっては消去できる可能性があります。たとえば借り入れ時期が古い場合や時効が成立した場合などには、事故情報を抹消できるケースが少なくありません。
ただし事故情報を消すには専門的な対応が必要です。弁護士に依頼する方がスムーズに抹消しやすくなるでしょう。
当事務所では事故情報や異動情報の削除請求に弁護士が専門的に取り組んでいます。社長がブラックリスト状態では会社に対する信用もなかなか得にくくなるでしょう。
信用情報の訂正に関心のある方がおられましたらぜひとも一度、ご相談ください。