
クレジットカードやキャッシングローンなどの申込みをするとき、「どうしても審査に通過したい」という思いから虚偽申告してしまう方がおられます。
年収や勤務先を偽ったりアリバイ会社を使ったりすると、大きなリスクが発生するので決してやってはいけません。
今回はカードやローンの審査で嘘の申告をするリスクについて解説します。
これからクレジットカードやローンを申し込もうとしている方はぜひ参考にしてみてください。
1.嘘の申告がバレるとどんなリスクがある?
クレジット・ローン審査に際して虚偽申告をするとどのようなリスクがあるのか、みてみましょう。
1-1.審査に落ちる
審査の最中に重大な嘘が発覚すると、審査は打ち切られます。当然、カードの発行は受けられません。
ただし住所の番地など「単なるミス」程度の間違いであれば、訂正してカードを発行してもらえる可能性はあります。
1-2.カード会社のブラックリストに載る
悪質な虚偽申告をしていったん審査に落とされると、カード会社やローン会社独自の「ブラックリスト」に登録される可能性が高くなります。
金融会社は、危険人物についての独自のブラックリストを作っているケースが多いからです。あらかじめ危険人物をリストアップしておけば、審査の申し込みがあったときに簡単に排除できるので、それぞれのカード会社が独自に社内ブラック情報を集積しています。
いったん社内ブラックリストに登録されると、二度とその金融機関やカード会社では審査に通してもらえないと考えましょう。
1-3.信用情報に情報登録される
クレジットカードやローンの申込みをすると、信用情報に申込情報が登録されます。審査に落ちた場合にはその結果も記録されるので、後から情報を参照した他の貸金業者には審査落ちの事実を知られます。
つまり一度カード審査に落ちると次の審査にも悪影響を及ぼし、別会社でもカードを発行してもらいにくくなってしまうリスクがあります。
1-4.カードを強制解約される
審査の際に虚偽申告がバレなかったとしても、カード発行後に嘘が発覚するケースは少なくありません。そのときにはカードを強制解約され、カード会社の社内ブラックリストに登録されてしまうと考えましょう。
1-5.債務整理が困難となる
悪質な嘘をついてキャッシングやローンを利用した場合、返済が厳しくなったときの債務整理が困難になる可能性があります。
自己破産の場合
自己破産の場合、申立前1年間に支払能力がないのに支払えるフリをして借金すると「免責不許可事由」に該当します。このように相手を騙して借り入れることを「詐術」といいます。
他に借金があるのに申告しない、実際より高い年収を書くなどの虚偽申告をすると、詐術に該当して免責を受けられない可能性があります。免責されないと借金が免除されないので、自己破産する意味がありません。
個人再生の場合
個人再生の場合、虚偽申告するような悪質な債務者については債権者によって「再生計画案」
に反対される可能性が高まります。
再生計画案を否決されると借金が減額されないので、個人再生する意味がありません。
任意整理の場合
任意整理の場合でも、悪質な嘘をついたら債権者が話し合いに応じてくれない可能性が高くなります。
このように虚偽申告をして無理にローンを利用すると、債務整理すらできなくなるリスクがあるのでくれぐれも注意しましょう。
1-6.詐欺罪が成立する
虚偽申告によってお金を借り入れると、詐欺罪が成立してしまう可能性もあります。
詐欺罪は相手をだまして財物の交付を受けると成立する犯罪。嘘の情報でカード会社や金融機関、ローン会社を錯誤に陥れてお金の貸付を受けたら「詐欺」となりますし、途中で気づかれて貸付を受けられなくても「詐欺未遂罪」で処罰される可能性は残ります。
1-7.文書偽造の罪が成立する
虚偽申告のために運転免許証や保険証、年収資料などの本人確認書類を偽造すると、公文書偽造罪や私文書偽造罪が成立する可能性もあります。
以上のように、カードやローン審査の際に嘘をつくとさまざまな高いリスクを伴います。
「正直に申告すると審査に落とされるのではないか?」と不安があっても、虚偽申告をしてはなりません。
2.カード審査で虚偽申告はバレるのか?発覚する仕組みを解説
実際にカードやローン審査で虚偽申告をすると発覚するものでしょうか?
虚偽がバレる仕組みや理由をみていきましょう。
2-1.氏名、住所、年齢について
氏名や住所、年齢などを偽って他人になりすますとほとんどのケースでバレます。
まずカードの審査の際には運転免許証などの本人確認書類を提示する必要があります。申込書や申込み用のフォームに他人の情報を入力しても、本人確認書類を提示できなければカードは発行してもらえません。
本人確認書類は素人が偽造できるものではありませんし、もし偽造すると公文書偽造罪が成立します。
個人情報の偽りやなりすましは高い確率で発覚する上刑事事件になる可能性もあるので、絶対にしてはなりません。
CICの本人特定は高精度
CICは、多くのカード会社が加盟している信用情報機関。実はCICには本人特定するための高精度なシステムがあります。
通常、信用情報機関は「氏名」「生年月日」「電話番号」や「氏名」「生年月日」「運転免許証番号」が一致するかどうかで本人を特定します。
CICでは「名字」と「名前」に分けた検索もできるようになっており「運転免許証番号」も組み合わせられるため、さらに高い精度で本人を特定できます。
たとえば結婚や離婚で名字が変わっても、こういったシステムを使って特定される可能性が高いと考えましょう。
「旧姓でカード発行を申請してもバレないだろう」などと考えるべきではありません。
2-2.「年収」の虚偽申告について
カードの審査を申し込む際には、年収の記入も必要です。ここで大幅な水増しをすると発覚する可能性が高いので注意しましょう。
年収は、勤務先や雇用形態(正社員化アルバイトかなど)、勤続年数や本人の年齢などの情報から推測できるものです。
申告内容に疑義を持たれると、別途収入証明を提示するよう求められるケースも少なくありません。
収入証明を提示すると、確実に嘘が判明するでしょう。悪質なケースでは社内ブラックに登録される可能性もあります。
「年収は個人情報だから、調べられるはずがない」などと軽く考えてはなりません。
年収のズレはどこまで許される?
年収を申告するとき、1円単位で正確に書かなければならないわけではありません。
数十万円程度のズレであれば、許容の範囲内となるでしょう。
たとえば年収270万円の方が300万円と書いても、大きな問題にはなりにくいと考えられます。
しかし年収500万円の方が700万円と書いたり、年収100万円の方が300万円を書いたりしたら重大な虚偽と判断されるでしょう。
概算でもかまいませんが、できるだけ正確な金額を書くべきです。
借金の総量規制と年収の関係
現在の貸金業法では「借金の総量規制」が適用されます。
借金の総量規制とは、年収の3分の1以上の貸付をしてはならないというルール。カード会社や消費者金融、ローン会社は、すでに年収の3分の1程度の借り入れをしている人に対してそれ以上貸し付けてはなりません。
そこで「キャッシング枠」のついているカードを申し込むと、収入証明書の提出を要求される可能性が高くなります。クレジットカードには「ショッピング」と「キャッシング」の2種類の枠があり、ショッピングは買い物代金の立替サービス、キャッシングはカード会社からの借金です。
ショッピング枠は総量規制の対象外ですが、キャッシングは総量規制が適用されます。
そこでカードにキャッシング機能がついている場合には借金の総量規制との関係で年収を厳しく判定される可能性が高くなるのです。
キャッシング機能付きのクレジットカードを申し込むときには、特に年収を正確に報告するよう意識しましょう。
2-3.「他社借入状況」について
クレジットカードの発行を申し込む際には「他社借入状況」を記載しなければならないのが一般的です。
他社借入状況とは、他社からどのくらい借り入れがあるか、という情報です。これも「借金の総量規制」や返済能力判定のために参照されます。すでに多額の借り入れをしている人の場合、カードやローンの審査に落とされる可能性が高まると考えましょう。
他社借入情報について虚偽を書いてもほとんどのケースで発覚します。審査の際、信用情報を参照されてしまうからです。
信用情報とは
信用情報は、個人のカードやローン利用状況についてまとめた情報。一人ひとりの個人について信用情報があり、専門の「信用情報機関」で管理されています。どこの会社からどのくらいの借り入れがあるのか、延滞したことがないかなど細かい情報がたくさん登録されます。
カードやローンの審査を申し込むと、カード会社やローン会社は必ず信用情報機関へ情報照会するので、他社借入状況について嘘をついてもほぼ確実にバレると考えましょう。
カードの審査に申し込むとき、他に借り入れがあるなら正直に申告する必要があります。
2-4.「住居状況」について
カードやローン申請の際には「住居の状況」を書く欄があり、賃貸か持ち家か、同居者所有か本人所有かなどの事情を記入する仕様になっているものです。
カードの審査では、一般的に賃貸より持ち家の方が有利になるので賃貸でも「持ち家」と書いてしまう方がおられます。
ただし若いのに持ち家があり住宅ローンの残高もなければ、カード会社から不審に思われる可能性が高くなるでしょう。また、本当に返済能力があるのか確認するために収入証明の提示を求められるケースもあります。
住居状況だけではなく収入まで虚偽申告していると、確実に審査に落とされて社内ブラックに登録されるでしょう。
住居状況の嘘についても安易に考えてはなりません。
2-5.「勤務先」について
勤務先についての虚偽申告は「在籍確認」で判明するケースが多数です。
在籍確認とは、カード会社やローン会社が申告された会社へ電話をして、本人が本当に在籍しているかどうかを確認する調査です。
嘘の電話番号や社名を書いて申告すると、確認をとれないので審査に落とされる可能性が高まります。
2-6.雇用形態について
アルバイトや派遣社員などの方の場合、審査で有利になるために「正社員」として虚偽申告してしまうケースがあります。
しかし年収額などや勤務先などの事情から怪しまれる可能性がありますし、悪質と判断されると審査に落とされるので、雇用形態についての虚偽申告も控えましょう。
2-7.勤続年数について
カード申し込みの際、勤続年数を記入する欄ももうけられています。
勤続年数は、どうやって調べられるのでしょうか?
健康保険証から発覚する
本人確認書類として健康保険証を提出すると「資格取得年月日」から入社日を判定される可能性があります。多くの場合、入社と同時に社会保険に加入するので、資格取得年月日を確認すると入社日がわかるのです。
本人の申告と資格取得年月日に大幅なズレがあると、不審に思われる可能性が高くなるでしょう。
信用情報から発覚する
カードやローンを利用すると、信用情報にその際の勤務先や本人確認書類を確認した日にちなどが掲載されます。
以前にカードやローンを利用したことのある方は、すでに登録されている情報と申告内容にズレがあると、勤続年数や勤務先の虚偽申告が発覚する可能性があります。
3.アリバイ会社を利用すると危険!
最近では、ローンやカード、不動産賃貸などの審査に通るために虚偽申告などの不正なサポートをする「アリバイ会社」が出現しているので、注意が必要です。
3-1.アリバイ会社とは
アリバイ会社は、勤務先や年収について本人が虚偽申告するために、虚偽の年収資料を作成したり電話番号を貸し渡して在籍確認の電話を受けたりする専門業者です。
たとえば無職の方や低年収の方であってもアリバイ会社を利用すると、実際よりも高年収に見せかけたり、存在しない会社に勤務している外観を作り出せたりできる可能性があります。
実際にカード会社がアリバイ会社に騙されてカードを発行してしまう例も存在します。
3-2.アリバイ会社を利用する危険性
しかしアリバイ会社を使うのは重大な不正であり、個人が虚偽申告するより悪質と判断される可能性が高いので、決して利用してはなりません。
犯罪に巻き込まれる
個人が年収や他社借入状況について虚偽申告する程度では、一般的に「詐欺罪」が問題となる可能性はほとんどありません。個人の技量では、運転免許証や年収資料の偽造も困難でしょう。
しかしアリバイ会社は組織的、日常的に書類の偽造や虚偽の在籍確認などの犯罪行為をしています。発覚すると刑事事件になる可能性がより高いといえるでしょう。
そうなったら、利用者としても犯罪に巻き込まれる可能性が高まります。「共犯」として逮捕されてしまう可能性もないとはいえません。
強制解約と社内ブラック登録
アリバイ会社を使ってカード発行を受けられたとしても、途上与信(カード発行後の与信審査)などによって嘘がバレる可能性があります。そうなったら、当然カードは強制解約になりますし、社内ブラックに登録されてそのカード会社では一生カードを発行してもらえなくなるでしょう。
残金一括請求
アリバイ会社の利用が判明してカードを利用停止・強制解約されると、その時点での残金を一括請求される可能性が高くなります。
虚偽申告やアリバイ会社の利用は、重大なカード規約違反となるからです。
支払えなければ裁判を起こされて給料や預貯金などを差し押さえられてしまうケースもあるので、軽く考えてはなりません。
4.信用情報についてのご相談は弁護士まで
他社借入状況や過去のカードやローンへの申し込み、利用状況などについては「信用情報」に集積されているので、審査の際に虚偽申告を通すのは困難です。
バレると強制解約、社内ブラックなどの大きなリスクが発生するので、絶対に虚偽を書いてはなりません。審査に通るか自信をもてないとしても、正直に申請しましょう。
万一信用情報に間違った情報が登録されている場合には、申請によって修正できる可能性もあります。自分の信用情報は信用情報機関へ開示請求すれば確認できます。
関心のある方は弁護士が開示請求や信用情報の訂正のサポートをさせていただきます。年収や勤務先などに問題がなく、これまで遅延もしていないのにカード審査に通らない方は、一度お気軽にご相談ください。